<阪神3-0巨人>◇21日◇甲子園

 巨人は「4番長野」で後半戦をスタートするも、阪神に無失点リレーされた。ゲーム差は2・5に詰まった。

 原辰徳監督(56)は試合前「お前さんの力を出せばいい。いい4番になれるから」と励ました。11年9月20日以来の重責を任された長野久義外野手(29)も「今日の打順は…。頑張ります」と気合を入れた。2安打に加え、6回無死一塁ではカウント3-1から中堅右に大きな打球を放つも、浜風に押し戻された。原監督は「風が少し…ね。いいスタートを切った」と内容ある打席を評した。本人は「(6回は)何とかランナーを進めていれば違った。上げてしまった」と反省した。

 有言実行だった。原監督は前日「柱、4番を固めたい。長野に先頭を切ってもらいたい」と期待していた。勝負強さ、積極性、頑健さ。認めるからこそ、節目の試合に重い決断をした。「1番から4番まで、機動力を使える。今、先のことを聞かれても困る。今日に関してのベストだった」と説明した。打線の幹を早い時期に固め、腰を据えて戦いたい意向を強く持っている。「4番長野」も選択肢に加えた。

 もっと大きな狙いもある。「自分から言う必要はないね」と軽くいなしたが、打順のめまぐるしい変更は選手に緊張感を与える。何より「打てば打順が変わる」というシンプル極まりない実力至上主義が、誇り高き巨人の主力を高ぶらせる。長野の「チームが負ければ悔しい。その気持ちに変わりはない。でも、より責任感を持たないといけない」との言葉が象徴的だった。この緊張感が“大型客船”を推進させる原動力になる。【宮下敬至】