<阪神0-4ヤクルト>◇29日◇甲子園

 初登場、ぶっちぎりの第1位!

 阪神岩田稔投手(30)が規定投球回に達し、防御率1・97のトップでランクインした。伸びるひげと歩調を合わせて水面下で数字を伸ばしていた左腕。8回2失点とこの日も奮闘し、1点台のまま浮上した。ところが援護なく、連勝ストップの4敗目。7月5勝目もついてきたら言うことなかったのに。

 ついに岩田の名前が現れた。規定投球回数に達し、“圏外”から一気に防御率リーグトップに躍り出た。数字はリーグ唯一の1点台となる1・97。虎が誇る安定感抜群の男が、13試合目の登板で日の目を見た。負けはした。今日30日にも再び投球回数に足りなくなる可能性が高い。だが、刻んだのは確かな1歩に違いない。

 「打たれていないので、これで負けるのは悔しい。でも負けたのは先に点を取られているから」

 8回4安打2失点。低めに丁寧にボールを集め、走者を背負っても粘った。だがそれよりも2回の2失点を悔やんだ。

 先頭バレンティンに3ボールから四球を与え、川端に内野安打。畠山には中前にポトリと落ちる適時打を浴びると、その後も犠飛で1点を失った。ムダな四球の撲滅。岩田の安定感を支えてきたテーマだけに、悔しさは大きかった。

 5回の打席では珍しく感情をむきだしにした。2点を追う展開で2死一、三塁の好機。食らいついてスイングすると、打球は一、二塁間へ向かった。ヤクルト山田がギリギリで捕球し、一塁はクロスプレーになった。間一髪アウト。両手で両膝をはたき奥歯をかみしめた。勝ちたい一心でスコアを動かそうと必死だった。

 「次はゼロを並べられるようにしたいです」

 当分は規定投球回数との追いかけっこが続きそうだ。だが岩田は以前から「後からついてくるものだから」と気にも留めていない。引退覚悟で始まったシーズン。開幕ローテを逃しても、1イニングずつゼロを積み重ねていくことで、信頼を勝ち取ってきた。スタイルを変えるつもりはない。そして何より、今はチームの勝利を欲している。【池本泰尚】