<巨人3-2DeNA>◇30日◇京セラドーム大阪

 京セラといえばカメ!

 巨人亀井善行外野手(32)が延長11回、サヨナラ6号ソロを放った。勝利まであと1人の9回2死、内野守備の乱れで追いつかれ延長戦に突入。一振りで嫌な空気を振り払った。亀井は、京セラドーム大阪で行われた5月31日、6月1日のオリックス戦でも、2戦連続で決勝打を放っている。ゲンのいい球場で攻撃的な2番打者が仕事をし、チームは今季50勝に到達した。

 亀の恩返しだった。亀井は心に誓っていた。9回目前で勝利を逃し、延長11回表には自らの失策でピンチを招いた。迎えた裏の攻撃。先頭で入り「守備でやらかしたから取り返したい」と集中を高める。2ボールから万谷が投じた141キロ直球を振り抜いた瞬間「ド真芯です」と勝負は決した。相手外野陣が1歩も動けない特大弾が右翼5階席に飛び込んだ。

 奈良出身の男は大歓声で京セラドーム大阪のお立ち台に迎えられた。「今年は(自分の)開幕戦でもここで打っていたし、またお立ち台に上がれて良かった」。キャンプの右手人さし指骨折から迎えた5月31日の復帰戦でオリックス金子に9回までノーヒットノーランを食らいながら、延長に決勝弾を放っていた。運気最高潮の球場で再現した。

 積極性を取り戻した。11日の阪神戦で自らのアイデアでセーフティースクイズを試み、失敗した。原監督は激怒した。「あれがスクイズに見えたか?

 ならばベンチの指導力不足」と報道陣に語気を強めた。3割を超えるチーム一の好調な打者が消極的に映った。それが許せなかった。

 この一戦では今季初めて2番に起用した。「攻撃的な部分に期待してね。何でもできる人だから」。亀井も攻撃性を意識した。「川相ヘッドにも『打順は気にするな』と言われた。打順への意識はブラインド(遮断)しました」と今季から取り入れた打撃のイメージトレに例えた。3回2死からの中前打を得点につなげ、延長サヨナラ弾と文句なしの働き。原監督も「もう1人、亀井がいないかなと思う」と最高級の賛辞の言葉を与えた。

 28日の練習日に32歳の誕生日を迎えた。高橋由、長野らと食事中に「今日、誕生日なんです」と切り出した。周囲は「早く言ってよ」とばかりに、チヂミにろうそくを立てて、盛大に即席のパーティーを行った。仲間の心遣いに、遠征8戦目の最終日に劇的な1発で恩返しした。

 「これが続くわけではない」と控えめな亀井に村田打撃兼バッテリーコーチが「亀仙人!」と声を掛けた。亀井の「仙豆」で巨人が息を吹き返した。【広重竜太郎】

 ▼巨人は坂本が初回に先頭打者本塁打、11回に亀井がサヨナラ本塁打。先頭打者&サヨナラ本塁打を記録したチームは、10年9月19日に楽天(聖沢と高須)以来4年ぶり。巨人では03年7月6日に清水と高橋由が放って以来、11年ぶり。亀井のサヨナラ弾は09年8月8日以来通算4本目で、巨人では川上、森、中畑を抜いて単独10位に浮上。ちなみに前記高橋由の本塁打も、通算4本目のサヨナラ弾だった。