<阪神5-4ヤクルト>◇30日◇甲子園

 歓喜の「ゴメスコール」がどこか懐かしかった。阪神マウロ・ゴメス内野手(29)は帽子を取り、虎党で埋まる右翼席へ丁寧にお辞儀をした。前日29日の欠場から一夜明け「4番一塁」の定位置に座った。26日広島戦以来3試合ぶりの適時打が、逆転勝利への始まりだった。

 「打点を挙げて、二塁打でチームの勝ちに貢献できて良かった」

 前夜は発熱を訴え初の欠場。チームも完封負けを喫した。迎えたこの日。初回に先発二神がつかまり、2点をリードされて裏の攻撃を迎えた。1死一、二塁で打席に立ち、2球目。最初のスイングで勝負ありだった。高めの直球を振り抜くと打球はあっという間に三塁線を破った。1点差に迫る適時二塁打。これが4番の仕事だ。逆転劇の号砲をいきなり鳴らした。

 「(熱は)ちょっとあるんだよ。喉もね。声を聞いたら分かるだろ?

 昨日よりは良くなっているんだけれど…」

 まだ万全ではない中、責任を全うした。午後2時半。試合前練習のためベンチから勢いよく飛び出ると、駆け足で一塁に向かった。すれ違う上本とグラブ同士でタッチ。体調不良を感じさせない元気な姿はチームに好影響を与えた。和田監督も「核ができるとランナーをためて(4番にまわす)という気持ちが強くなるからね」とゴメス効果を称賛。歯車が回り出した。

 「自分は最初からベストを尽くそうと思っている」

 グラウンドでは一切言い訳しない。今年の4番はゴメス-。それを納得させる追いあげ打だった。【松本航】