<阪神1-8ヤクルト>◇31日◇甲子園

 ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(30)が、6試合ぶりの1発で4年連続20本塁打の大台に乗せた。1回、阪神能見のスライダーをバックスクリーンへ先制2ラン。試合前に首脳陣に助言を願い出て行った“突貫工事”の成果を発揮し、チームを約1カ月ぶりのカード勝ち越しに導いた。昨季に月間新記録となる18本塁打を放った8月を、3年連続本塁打王が上昇ムードで迎える。

 きれいな軸回転で、バレンティンがクルリと回った。1回2死一塁、阪神能見の高めに浮いたスライダーに思わずバットが出た。だが、体は前に突っ込まない。「狙っていた球ではなかったがうまく反応できた」。先制の20号2ランとなって、バックスクリーンへ消えた。6試合ぶりの1発で4年連続20本塁打の大台に到達。「ホントニ?」と日本語で驚くと「4年連続30本を目指して頑張るよ」と満面の笑みを浮かべた。

 7月は深刻なスランプに悩んだ。同13日の左アキレスけん痛からの復帰後、この試合前まで打率2割2分9厘で1本塁打。緩慢な守備や走塁も目立った。27日DeNA戦後には、佐藤ヘッドコーチに「4番がやることはみんなが見ているから頑張ってくれ」と個別で激励され、うなずいた。

 この3連戦では全力疾走の意識を高めたが、30日には平凡なファウルフライを落球。この遠征には練習用の外野手用グラブを忘れてきてしまっていた。3年連続本塁打王にとって、一番の存在価値は「本塁打」。イージーミスやあり得ない忘れ物は、まだ打撃で頭がいっぱいの証拠だった。

 これ以上、チームに迷惑は掛けられない。だからこそプライドを捨てた。試合前練習で杉村打撃コーチと佐藤コーチを呼び止めた。「去年と同じつもりなんだけど、どこが違うんだ?」。自ら教えを請うた。「軸足に体重を乗せて間を取る」「ボールとトップの位置の距離を取る」の2点を助言され、山なりの球のトス打撃を繰り返した。「すぐに結果が出るとは思っていない」と言いつつ、20号は必死さが生んだ“突貫工事”のたまものだった。

 苦悩の7月を終え、大好きな8月を迎える。昨季は1カ月で18本ものアーチを描いた。「今日の1本で良いスタートが切れたと思って、良い月にしたいね」と頬を緩めた。今年も豪快な本塁打の数々で、熱狂の夏にする。【浜本卓也】