<巨人3-4阪神>◇12日◇東京ドーム

 きた、きた、さあ今日こそ首位浮上だ!

 2位阪神が巨人との首位攻防第1ラウンドを逆転で制し、0・5差に詰め寄った。先発ランディ・メッセンジャー投手が、まるで高校球児のように大暴れ。投げては6回2失点でハーラートップに並ぶ10勝目を手にすれば、6回1死満塁で2点適時打など、走攻守に奮闘し、ユニホームを泥だらけにして宿敵を倒した。真夏の決戦、今日13日の第2戦も連勝なら、待望の首位に立つ。

 だれよりもユニホームが汚れていた。ほとばしる闘志の証しだった。メッセンジャーが宿敵をねじ伏せた。3点リードの6回、3連打で1点を失った。なお無死満塁。最大の危機に気力を振り絞った。井端を力で抑え込み、代打セペダは152キロでバットすら振らせず、ロペスはスプリットで空を切らせた。圧巻の3者連続三振。相手の反撃ムードを断ち切った。

 「疲れはなかったよ。先頭を三振に取れれば、いけるかなと思っていた」

 自分で投げ、自分で打って、勝つ。198センチの大男が敵地東京ドームを支配した。同点で迎えた5回、速球をたたきつぶした。右中間を真っ二つに破る二塁打。三塁へ進んだ後、鳥谷の右犠飛でタッチアップし、勝ち越しの本塁へ激しく滑り込んだ。6回1死満塁では追い込まれながら杉内の変化球を中前へ2点打。貪欲に二塁も狙い、あわてて帰塁する際にはヘッドスライディングまでした。高校球児のように、泥と汗にまみれた。

 「自分自身で楽にすることができてよかった。忙しい1日だったね」

 強い相手と戦いたい-。戦う男の原点が胸には宿っている。昨季は相性や日程の関係から巨人戦での先発がなかった。「なぜ、俺をジャイアンツ戦で投げさせてくれないんだ!」。首脳陣に熱く訴え続けた。それが実った今季は6試合で4勝0敗、防御率1・88。文句なしのG倒ぶりだ。

 投手は登板後、トレーナーのところへ向かう。張りや疲労を緩和するマッサージのためだが、メッセンジャーはほとんど来ないという。今季は両リーグ1位の年間230投球回ペースで投げている。中5日を基本に中4日も望むところ。最もタフな登板を続ける男のストイックな姿勢に球団スタッフも、「意識が高いんでしょうね。さすがです」と感嘆する。

 セ・リーグのハーラートップに並ぶ10勝目は、首位巨人に0・5差と迫る、大きな1勝になった。

 「このシリーズの初戦が大事だとわかっていた。明日は応援するよ。なんとしても優勝を目指したい」

 今日13日、33歳の誕生日を迎える。願わくば、ハッピーバースデーは首位に立って歌いたい。【鈴木忠平】

 ▼メッセンジャーが10勝目を挙げ、4年連続2ケタ勝利。これで今季の巨人戦は4勝0敗。巨人戦で開幕から無傷の4連勝を記録した外国人投手は95年ブロス(ヤクルト=5連勝)02年ホッジス(ヤクルト)に次いで3人目。外国人投手の4年連続2ケタ勝利は、64~68年バッキー(阪神=5年)83~86年郭源治(中日)85~89年荘勝雄(ロッテ=5年)00~03年ミンチー(ロッテ)に次いで5人目だ。打っては満塁のチャンスで2点適時安打。満塁でのメッセンジャーは来日通算9打数4安打、打率4割4分4厘の11打点。今月5日にも3点二塁打を放つなど、野手顔負けの打撃だ。