<ヤクルト4-1巨人>◇5日◇神宮

 719日ぶりの白星に、ヤクルトの「バカボン」七條祐樹投手(30)が号泣した。約2年ぶりの先発で、巨人を1失点に抑えてプロ初完投をマーク。お立ち台では「先発のマウンドに立てることが本当に光栄…」と声を詰まらせた。「うれしいのひと言です」と、喜びを口にした。

 背水の陣だった。ここ2年間は未勝利で、今季も2軍暮らし。それでも「子供の寝顔を見ると、つらくても頑張れるんですよ」と気持ちを切らさなかった。そして、故障者が出たことでチャンスが巡ってきた。「これをつかまないと、あとがない」と腹をくくった。

 覚悟の裏には「新しい命」の存在もあった。11月に第3子が誕生予定。千春夫人(30)は直輝君(3)とみな実ちゃん(1)とともに、出産のため大分の実家に帰省している。“1人暮らし”の日々だが、子供の写真を見ては「寂しいけど、いない分頑張ろう」と奮い立たせた。マウンドでも、折れそうな気持ちを鼓舞し続けた。怖がらずにシュートで内角を意識させ、直球を生かした。

 勝ったことで、先が見えた。起用法は未定だが、1軍にとどまることが決まった。テレビ観戦した家族に最高の報告ができた。「とりあえず元気な姿を見せられて良かった」と、涙は笑顔に変わった。チームはまだ最下位だが、今日はこれでいいのだ。【浜本卓也】