<広島2-1中日>◇9日◇マツダスタジアム

 そう簡単に離されてたまるか!

 広島が4連勝中の中日相手に総力を結集し、今季7度目のサヨナラ勝利をゲットした。エース前田健太投手(26)は白星こそつかなかったが、8回無失点の快投で勝利をお膳立て。最後は10回裏1死満塁で2番菊池涼介内野手(24)が自身初となるサヨナラ打を決め、首位巨人との3ゲーム差をキープした。

 劇的な幕切れだった。1-1で迎えた延長10回。1死満塁。広島菊池の放った打球がセンター大島の頭を越えた。粘り腰のカープが大事な9連戦初戦で今季7度目のサヨナラ勝ち。勝利の瞬間を見届けた前田は、笑顔を浮かべて少し遅れてベンチから飛び出した。

 試合を決めたのは菊池のひと振りだったが、勝利を引き寄せたのは紛れもなくエースの意地だった。

 決して本調子ではない。それでも1歩も引くわけにはいかなかった。5回まで毎回安打を許す苦しい展開。1回には味方の失策も絡み、いきなり2死二、三塁と追い込まれたが、森野を内角スライダーで二ゴロ。連打を許さず要所を締めた。最後の8回2死の場面では荒木を150キロ直球で空振り三振。スーパームーンに照らされて気迫の8回無失点でバトンをつないだ。結局、9回に追いつかれて11勝目は吹き飛んだが、前田の表情はスッキリしていた。

 「最後、勝てたんで良かった。チームの勝利につながる投球を、と思っていた。ここ最近自分が打たれて負けることが多かったので」

 この日にかける思いは強かった。前回3日の巨人戦は1点リードの5回に崩れて4点を失った。2戦前の8月28日ヤクルト戦も4回5失点で黒星。後半戦はこの試合まで7試合に先発し、1勝4敗、防御率4・70と、屈辱の数字が並んでいた。責任を感じながら今季8度目の中5日のマウンドに上がった。

 負けられない試合が続く。この日は首位巨人も勝ち3ゲーム差は変わらなかった。次回も中5日で15日巨人戦に先発する見込みだ。

 「ジャイアンツにはいい結果が出ていない。ここから勝っていかないといけない相手」

 この日もナショナルズなど5球団のメジャー関係者がネット裏から目を光らせていたが、今はチームを23年ぶりのV奪回に導くことしか頭にない。【桝井聡】