<巨人4-2ヤクルト>◇20日◇東京ドーム

 巨人小山雄輝投手(25)が、8回1失点の好投でCS進出を決めた。開幕を2軍で迎えたが、交流戦から先発ローテに定着した4年目の成長株が、才能を開花。交流戦の優勝に続き、チームの節目で好投。持ち味はフォークだが、直球主体の攻めのスタイルで勝負。今季無敗の東京ドームで躍動した。短期決戦のポストシーズンに向け、存在感が高まった。

 今の自分を信じた。2点リードの8回2死、カウント3-2からの6球目だった。小山が阿部のサインに1度首を振った。投げ込んだのは146キロの直球。山田の巧みなバットコントロールに屈し右前打となったが、後悔はなかった。森岡を左飛に仕留め、8回1失点で降板。交流戦優勝の日、そしてCS進出を決める試合で存在感を見せた。「巨人にいるからこそ、できる経験。感謝したいです」。重圧よりも、感謝が勝った心境が成長を物語った。

 でっかくなった。マジックが点灯する中での先発で、開拓したのは新たな自分だった。2種類を自在に操れる「フォークの達人」。いつもは直球と半々を占める武器が120球中、わずか35球だった。その分、シュートを含む直球系を75球。5回無死一、三塁、さらに2死二、三塁から直球でねじ伏せた。「(フォークを)不安になるくらい投げなかった」と言ったが、直球主体の勝負に「勉強になった」と実感した。

 過去の自分は捨てた。キャンプは1軍スタートだったが、沖縄に移動後、不調で2軍に降格。試合中に荷物をまとめ、2軍キャンプ地の宮崎へ移動した。見知らぬ人に囲まれ、小さくなって、シートに腰を掛けた。悔しくてたまらなかったが、心優しく、穏やかな右腕に芽生えたのはギラギラの闘争心だった。

 小山

 今までなら、シーズンに入ってからが勝負だな、なんて思ったけど、それは違うと。今、なんだと。今、やらないでいつやるんだ、と強く思った。

 3日の広島との首位攻防戦前、原監督は「今がチャンスだと思えるか。『いつやるんだ、今でしょ!』って言葉、あったよな」と言った。まさに、小山にとってのチャンスは今。ポストシーズンでの先発も視界に捉えた。原監督は「今、一番安定感がある。研究を生かして、今日にいる。いい位置の中で戦っていますね」と認めた。試合終了から約30分後、足早に球場を去った。「美容室なんです。(予約が)6時に取れたので」。マウンドでの覚悟とは対照的に、素は穏やかだった。【久保賢吾】