<日本ハム6-4ソフトバンク>◇28日◇札幌ドーム

 日本ハムがクライマックスシリーズ(CS)進出に王手をかけた。2回2死満塁から連続押し出し四球や陽岱鋼の2点適時打などで一挙5点。栗山英樹監督(53)は手綱を緩めず、6回にスクイズ(記録は内野安打)で1点を加え、ソフトバンクの反撃を振り切った。進出濃厚なCSでも対戦する上位2強に連勝。今日29日西武戦で勝つか、引き分け以下でも4位楽天の勝敗次第で3位が確定する。

 したたかに、周到に、決戦へ備えた。余念はなかった。5点リードの6回1死一、三塁。市川への初球。栗山監督は、スクイズを選択した。「1点でも多く取りたかったし、バリエーションは増やしておかないといけない」。決定的な6点目は、ポストシーズンでの再戦へ向けた布石でもあった。1点の重みが増す短期決戦。得点パターンを増やすことは、攻撃力アップだけではなく、相手バッテリーを惑わせることにもつながる。

 2年ぶりのCS進出には王手がかかった。相手は、この日のソフトバンクかオリックス。与四死球5と苦しんだ中村だが、終わってみれば5回を無失点。今季ソフトバンク戦は4戦4勝と封じ込んだまま、優位にポストシーズンのマウンドに立つことができる。

 前日27日にオリックス打線を7回2失点に抑えた上沢も、対オリックスは今季8戦4勝(チームは5勝)。相性そのままに、相手打線にインパクトを残して最終準備を終えた。指揮官は「CSになれば面が変わって、違うものになる。でも嫌なイメージで向かうことはなくなった。ウチは下からいく。(最後の対決に)勝って終わって、ぶつかっていくのはいいとは思う」と力を込めた。

 2年前の秋。ガムシャラに駆け抜けた監督就任1年目は、屈強な巨人の壁にはね返され、散った。歓喜に沸く敵地は、いまでも脳裏に焼き付いている。当時、涙をため、言った。「出がらしになって何も残らないかと思っていたけど、悔しさで来年のことを考えている。この悔しさは、ものすごいエネルギーになる」。雪辱は、果たせないままでいる。リベンジの舞台へと続く階段。上り詰めるための青写真が、着実に描かれている。

 公式戦は残り5試合となったが、今年はその先に大きなヤマがある。「優勝を逃したことは申し訳ない。でも144試合、最後まで意味のあるものにしたい。それは最低限のライン」。昨季は味わうことのできなかった緊張感。実りの多い秋を迎えた。【本間翼】