<阪神1-0DeNA>◇29日◇甲子園

 2度目もなめられたら黙っていない。阪神マウロ・ゴメス内野手(30)が来日初のサヨナラ打を放った。延長10回1死満塁。2打席連続で鳥谷敬遠策から勝負された4番は、センターへの犠飛でリベンジした。ゲーム差0で肉薄する広島も勝ち、2位浮上はお預け。でも、きっとなれる。頼れる4番がいる限り、逆転2位、信じてます!

 一塁ベースを回って、ゴメスと熱く抱き合っていた鳥谷が一目散に逃げた。水しぶきがザザーッと降りかかる。標的はヒーローになった助っ人だ。息詰まる投手戦だった。土壇場で勝負強さを発揮するのは、やはり4番だった。両軍無得点の延長10回1死二、三塁。目の前で3番鳥谷が歩かされた。2打席連続の敬遠にも心は乱れない。満塁の絶好機。加賀が投げた3球目の甘い直球をとらえ、中堅に決勝犠飛を打ち上げた。

 「ハッピーだね。ヒーローになるチャンスをもらって、打てて良かったよ。2回目に(鳥谷が)歩かされたときは併殺を狙っていたんだろうけどね。それも向こうのやり方。1回目もアウトになったけど自分のいいスイングをできていた」

 CSの本拠地開催権を争う2位広島もリードしている展開だった。譲れない展開で来日初のサヨナラ打。和田監督も「その打席でケリをつけるタイプ。その後に引きずらない。4番の仕事をしてくれた」と感心した。8回の2死満塁で遊ゴロに倒れていた大男が汚名をそそぐ一撃を見舞った。

 先日、野球人として心震える瞬間があった。横浜から帰阪した26日、午前中はテレビにくぎ付けだった。大リーグのヤンキース戦を観戦。スーパースターのジーターが本拠地で最後の勇姿を見せた試合だ。自身がレッドソックスでプレーした12年も「Hi!」とあいさつを交わす程度で、ほとんど面識はない。それでも「いいゲームだった。感動したよ。野球殿堂に入るだろ」と声を上ずらせた。サヨナラ打の光景だけではない。ひとしきり、周囲に祝福された後だ。たった1人で遊撃の定位置にしゃがみ込み、祈りをささげていた姿に熱くなったという。いちずに野球に打ち込んできた男の美しさに共感した。

 しびれるような毎日を過ごすゴメスはリラックスも上手だ。この日はハサミを手に取った。髪を短く整えてグラウンドへ。「だいぶ長くなっていた。見栄えが良くなって男前だろ。25歳くらいに見えるかい!」とおどける。母国ドミニカ共和国で過ごすスタイルに戻し、もじゃもじゃのヒゲもさっぱり。デキル男は身だしなみも整えるのだ。

 これでリーグ1位の108打点。広島エルドレッドがこの日、5打点で猛追するが渋くリードを保つ。2位広島とはゲーム差なしの勝率わずか3毛差。頼れる大砲がデッドヒートの先導役を務める。【酒井俊作】

 ▼阪神は最短で10月1日に今季の2位が決まる。仮に今日30日に阪神○広島●なら、1日の直接対決で広島に○または△で決定する。