ボールは次々と100メートル先のフェンスを越えていった。17日、楽天伊志嶺忠捕手(29)が居残り特打でロングティーを実施。一塁側ベンチ前から右翼席へ向け、力強く振り続けた。約90スイングで柵越えは30本ほど。なかなかの頻度だった。プロ通算本塁打は1本にとどまるが、トスを上げた河野2軍打撃コーチからも「飛ぶんだよ。生かしてもらわないと」と、期待の言葉をもらった。

 来季で8年目。6月には30歳を迎える。中堅の域に入ったが、1歳上の嶋が正捕手に座る現状で出場機会は限られてきた。第2捕手として何をアピールするか。出した答えが打撃だ。「キャッチャーとして、まずは守りなんでしょうけど、打撃も頑張りたい。左は僕だけですし」と言った。5人いる捕手のうち、左打ちは伊志嶺だけ。希少価値を武器に、このキャンプでも積極的に振り込んでいる。

 100球近くも振り続けるロングティー。過酷なメニューにも「今の時期にやっておきたい」と意欲的だった。河野コーチは「球の表面ではなく、コア(核)を、こすらずに打つ」と狙いを説明した。振り込んだ分は、きっと来春へつながるはずだ。【古川真弥】