江夏さん、血がみなぎります!

 阪神OBの江夏豊氏(66=野球解説者)が来春沖縄・宜野座キャンプでの臨時コーチ要請を快諾した。29日に大阪市内ホテルで開かれたOB会総会に初めて出席。球団創設80周年の記念すべきシーズンに向け「現場復帰」が決まった大物OBは早くも意欲的に、将来のエースを期待する藤浪にタイトル奪取を命じた。

 “伝説の左腕”の闘志に火が付いた。75年にタテジマのユニホームを脱いでから39年。阪神のグラウンドに江夏氏が戻ってくる。

 「実際にボールを投げている姿を見るその日まで、楽しみにしておきます。自分も野球人だからピッチャーが投げて、キャッチャーにボールが吸い込まれる音を聞いたりしたら、血がみなぎってくると思う」

 球団からの正式要請を快諾。来春キャンプでの臨時コーチが決まった。久しぶりの現場に高まる気持ちを抑えられない。66年1次ドラフト1位で阪神に入団。最多勝のプロ2年目にはシーズン401奪三振のプロ野球記録をつくった。71年球宴での9者連続三振など日本球界に大記録と記憶を残したレジェンド・エースが、現役の虎投手陣に、技術や精神を伝授する。

 江夏氏と同様、高卒新人から2年連続2桁勝利を達成した藤浪には、タイトル奪取指令を出した。「俺らの時代は10勝勝っても大きな顔ができなかった。今は最多勝が13勝という時代。でももう少し勝っていたら最多勝も狙えた。来年はタイトルを狙えるような投手になってほしいね」と期待した。江夏氏もプロ2年目の68年には最多勝のタイトルを獲得。最多奪三振では1年目から常にリーグ上位に君臨した。藤浪については「彼は阪神だけではなく、日本球界の宝」と認める逸材。大エースから未来のエースへと受け継がれる。

 「一番は邪魔をしないこと。それだけを心掛けていきたい。(球団創設80周年は)すばらしい歴史。大事な節目に少しでも手伝いができたら言うことなしだね」

 節目のシーズンに悲願のリーグ優勝へ。藤浪だけではなく、成長が望まれる左腕、若手…投手陣全体に江夏イズムが注入される。【宮崎えり子】

 ◆江夏豊(えなつ・ゆたか)1948年(昭23)5月15日、兵庫県生まれ。大院大高から66年1次ドラフト1位で阪神入団。在籍中に最多勝2度(68、73年)最優秀防御率1度(69年)。73年8月30日中日戦(甲子園)でノーヒットノーラン。76年に南海に移籍し、リリーフ転向。広島、日本ハム、西武と移り、実働18年で通算206勝158敗193セーブ、防御率2・49。現役時代は179センチ、90キロ。左投げ左打ち。

 ▼阪神のプロ3年目以内投手による主要タイトル獲得は、2リーグ分立後3人。58年オフ入団の村山実は、1年目の59年に最優秀防御率。江夏は1年目の67年から72年まで6年連続連続最多奪三振(当時は表彰なし)、2年目68年に最多勝、3年目69年に最優秀防御率。中西清起は2年目の85年に最優秀救援投手を獲得した。