ああ、厳冬の補強ゼロ…。阪神がオリックスから国内FA宣言した金子千尋投手(31)の獲得に失敗した。交渉役の中村勝広GM(65)が24日、金子の代理人から断りの連絡が入っていたことを明かした。金子本人との対面交渉も実現していたが、中村GMらが訴えた虎の熱意は届かなかった。今オフはアスレチックスFAの中島らの獲得を目指しながら、いずれも敗退。実質的に補強できない苦境に陥っている。

 酷寒のクリスマスイブになった。阪神が今オフ補強の目玉に位置づけていた金子獲得は幻と消えた。交渉役を務める中村GMの電話が鳴ったのは前日23日の夜だった。金子の代理人から連絡が入り、入団を断られた。この日、金子がオリックス残留を表明する2時間半前、西宮市内の球団事務所で対応した中村GMは苦渋の表情を浮かべた。

 「初めから今回の案件は雲をつかむようなレベルだった。あれだけの投手だから当然、攻めなきゃいけないと思いました。ある程度は予想されたというか…」

 パ・リーグのエースに対してシーズンの早い段階から獲得調査を始めていた。メジャー志向もあり、1度は撤退したが国内FA宣言したことで果敢に争奪戦にチャレンジ。11月の右肘手術も問題視せず最大4年の大型契約を提示。この日は金子自身にも対面交渉していたことが分かった。中村GMは「会ったというか会ってくれたというか。(代理人を含めた)3者で話をした」と明かす。ありったけの熱意を伝えたが、吉報は届かなかった。

 年の暮れに厳しい現実を突きつけられている。来季は球団創設80周年。悲願の優勝に向けて補強に乗り出したが、ことごとく失敗した。中日山井、日本ハム宮西、ロッテ成瀬を調査したが断念。6日には野手の目玉だった中島を振り向かせられず、同じ関西のオリックスに移籍していく。そして、この日は金子に振られた。坂井オーナーも大阪市内で「縁がなかったということ」と話すにとどめた。

 海外FA宣言している主力の鳥谷は去就が流動的な状況だ。来季の戦力を整備する上で、ドラフト以外のプラス要素がないのが現状だろう。新たな補強策は見当たらず、中村GMも「既存の戦力の底上げを図る。現場に頑張ってもらうということです」と声を絞り出した。和田阪神が、かつてないイバラのオフを過ごしている。<阪神今オフの主な補強対象>

 アスレチックスFA中島裕之内野手(32)=オリックス入団

 オリックスFA金子千尋投手(31)=オリックス残留

 中日山井大介投手(36)=FA宣言せず中日残留

 ロッテFA成瀬善久投手(29)=ヤクルト入団

 カブスFA藤川球児投手(34)=レンジャーズ入団

 日本ハム宮西尚生投手(29)=FA宣言せず日本ハム残留