監督、僕の球を受けてください!

 ロッテの新人合同自主トレが9日、QVCマリンで始まった。ドラフト2位の田中英祐投手(22=京大)は約3時間のメニューを、そつなくこなした。まだ半分ほどの力でキャッチボールする段階だが、20日までの合同自主トレ期間の後半にはブルペン入りする予定。さらに、2月の石垣島キャンプで伊東勤監督(52)に投球を受けてもらうことを希望した。

 田中は自分を冷静に分析していた。ドラフト6位の宮崎とのキャッチボールは、最大約40メートルにとどめた。シュート回転し、首をひねる場面もあった。だが「毎年(この時期は)これぐらいで、5割の力です。投げ始めなので。体が安定すれば良くなります」と落ち着いて振り返った。

 焦らない。初日の感想を「思ったより体が動きました。自主トレ後半にブルペンに入れるようにやれればいい」と言った。もともと、ブルペン入りは今月中旬以降のつもりだった。目算どおりの手応えを得た。さらに「伊東監督に受けてもらいたいか?」という質問にも、「最初は緊張しそうですね。受けてもらいたいと思います」と気後れしなかった。実力をじかに伝えるチャンスを望んだ。

 既に、伊東監督の金言は受け止めている。練習開始時「大変な世界だけど、やればやった分だけ返ってくる。やらなければ、跳ね返ってくる」と訓示された。「野球と向き合う時間が長い。どう向き合うかにかかってくる」と解釈。前日8日から人生初の“野球日記”を付けている。「今までより情報量が増える。その日の反省も込めて。後で役立つかなと」と明かした。

 京大初のプロ選手として注目を集める。この日も30人を超える報道陣が集まり、シャッター音が鳴った。それゆえ、伊東監督には心配がある。「去年のことがないように。話題先行だと、選手も空回りする」。昨年は、オープン戦でブレークしたルーキー井上に、そのまま開幕4番を任せたが、公式戦では結果を残せなかった。田中には「注目されるのは良いことだけど、これからは野球で目立って欲しい。特別扱いはしない」と注文した。ただ、当の田中は「野球で成績を残すしかない。それが仕事。それが一番」と周囲のフィーバーも、どこ吹く風。浮つくことなく、初日を終えた。【古川真弥】

 ◆田中を巡るフィーバー

 昨年10月23日のドラフト指名後の会見は、京大のノーベル賞候補が受賞会見を行うホールで行われ、京大生約100人も詰め掛けた。同24日の指名あいさつは、球団広報が「記憶にない」という約60人の報道陣。春季キャンプでの専属広報プランも浮上した。また、ルーキーながら同28日には、兵庫県警高砂署で一日署長を務めた。難関大学出身とあり、受験関連の取材も殺到した。<過去の新人フィーバーメモ>

 ◆荒木大輔(ヤクルト=83年)

 甲子園のアイドルとして人気沸騰。ファン殺到で移動困難となり、神宮球場とクラブハウスの間に「荒木トンネル」と呼ばれる地下通路が掘られた。

 ◆高橋由伸(巨人=98年)

 新人合同自主トレに上田スカウトが送迎するVIP待遇で「初出勤」。人気対策もあり警備員4人の緊急配備が決定。

 ◆松坂大輔(西武=99年)

 元五輪スケート銅メダリストの黒岩彰氏が専属広報に就任し、キャンプでは専属警備員も配置。松坂と体形の似る谷中が背番号18をつけ影武者としてファンを引き付ける一幕も。

 ◆斎藤佑樹(日本ハム=11年)

 新入団歓迎式典には鎌ケ谷球場史上最多の1万1000人が来場。テレビ局のヘリコプターが5機飛び、グッズも1時間で完売した。