いつかは岩瀬さんを超えたい-。中日浅尾拓也投手(26)が10日、名古屋市内の球団事務所で契約交渉を行い、6000万円増の年俸1億3500万円で更改した。プロ4年で1億円プレーヤーとなった右腕は自分と同じ中継ぎからストッパーとなり、球界最高俸まで出世した岩瀬を今後の大きな目標に定めた。

 目いっぱい腕を振り続けた72試合が報われた。浅尾がプロ4年でついに1億円の大台を突破した。

 「想像と多少違う部分もありましたが、最終的に満足しています。たくさん気持ちを伝えて頂いた。『よく働いてくれた』と言ってもらいました」。

 全試合数の半分に登板し、12勝3敗、防御率1・68。シーズン59ホールドポイント(HP)、25試合連続HPと2つの日本新記録をつくった。文句のつけようがない活躍に、球団側も最大限の評価をした。

 愛知大学野球リーグ2部の日本福祉大からドラフト3巡目で入団して4年。アマ時代は無名の右腕が1億円プレーヤーの仲間入りを果たした。まだ26歳、これからさらなる飛躍が待っている。普段は無欲な男はこれを機に、壮大な目標を追いかけることを決めた。

 「岩瀬さんと比較されたら正直、厳しいです。でも、いつかは抜かしたいという気持ちは持っていないといけないと思います」。

 追いかけるのは球界日本人最高俸プレーヤー・岩瀬だ。同じ愛知県出身で、リリーフとして才能が開花した。プロ5年目の年俸は浅尾より500万円多い、1億4000万円。2人には共通点も多く、ここまでの歩みは似ている。ただ、岩瀬と同じ“出世ロード”を歩むにあたって厳しいのはむしろこれからだ。

 「岩瀬さんは12年連続ですよね?

 岩瀬さんは別格です」。

 岩瀬がプロ入りから続けている12年連続50試合以上登板はリリーフの常識では考えられない記録だ。ただ、浅尾はあえて偉大な鉄人を追いかける。来季へのモチベーションを得るために必要なことだった。

 「一番こだわっている数字は試合数です。来年も今年より投げるつもりでいますから」。

 交渉の中で球団幹部に岩瀬がどのような成績をおさめ、現在の地位までのぼりつめたかを質問したという。岩瀬の歩調についていくためには来年以降も、その細身で60試合近く投げ続けなければならない。ただ、積み重ねることでしか手にできない地位と報酬がある。はるか高い山を目指すことで、浅尾はさらに大きくなろうとしている。【鈴木忠平】