ジョーンズ先生のおかげで、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の予習はバッチリです!

 侍ジャパンのエース、楽天田中将大投手(24)が12日、紅白戦に先発。新外国人のケーシー・マギー内野手(30)に1発を浴びるなど、2回を投げて2安打1失点だった。マウンドを降りた後には、“敵チーム”のアンドリュー・ジョーンズ外野手(35=ともにヤンキース)の元へ出向き、球筋の感想を聞くなど勉強熱心なところを見せた。WBC第2ラウンドで対戦の可能性もあるオランダ代表の大砲から助言をもらい、3連覇への挑戦に向け準備万全だ。

 降板後、なぜか“敵軍”の三塁側ベンチに田中の姿があった。誰かの言葉に耳を傾けている。視線の先には、相手チームの指名打者ジョーンズが座っていた。直立不動で尋ねた。

 田中

 ジョーンズさん、僕の球筋はどうでしたか?

 ジョーンズ

 初球と2球目の変化球は(曲がりが早く)投げた瞬間にボールと分かったよ。追い込まれてからのスプリットは、ともに直球と思って打ちにいった(2球ともファウル)。あれを続ければ、打者はてこずるよ。

 通訳を交え、およそ3分間。四球に終わった、8球に及ぶ対戦の感想を聞いた。気になっていたことがあった。「ブルペンだと変化球の曲がりが早いかな、と。確認したかった」。そこで、メジャー通算434本塁打の“目”に答えを求めた。ズバリの指摘をもらい「頭の良い人ですね。超一流の方に言ってもらった。しっかり取り組めます」と、修正点をつかみ、うれしそうだった。

 ジョーンズ先生の授業は、もう1つあった。2回に浴びたマギーの本塁打。カウント2-2から内角直球を左翼ポール際に運ばれた。「2球、内角に投げたけど、ずっとAJ(ジョーンズ)が声を出して(コースを)教えていた」と感じた。というのも、1-1からの内角ツーシームは強振されてファウル。最後も「狙ったとおり」内角に投げたのに、完璧に捉えられたからだ。

 ジョーンズは「マギーには『直球についていけ』と言った。2-2で変化球のカウントと思ったけど(田中が)首を振るのが見えたからね」と明かした。実際の伝達内容はコースではなかったが、田中は「(ベンチからの伝達は)国際大会では考えられること。捕手がフェイントを入れるとか、バッテリーで考えないと」と反省した。WBCを前に、元ヤンキースコンビの共同作業を目の当たりにできたのは貴重だった。

 日本とオランダが、ともに勝ち進めば、第2ラウンドで「田中VSジョーンズ」の可能性もある。“前哨戦”を終え、田中は「そういう舞台で顔を合わせられたら」とワクワク感を隠さない。ジョーンズも「まずは第1ラウンドを突破しないとね。対戦を楽しみにしているよ」とほほ笑んだ。

 田中は味方相手だと気持ちが入らないため、紅白戦は「あまり好きじゃない」という。そこで得難い体験をし「順調だと思う。前に向けて準備したい」と締めた。開幕投手を務める3月2日ブラジル戦まで20日を切った。侍エースにとって、実り多い1日だった。【古川真弥】