侍ジャパンの先発2本柱の1人、前田健太投手(24)が先発構想から外れる可能性があることが20日、分かった。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表メンバー28人が発表された。右肩の不安は解消されていない前田健はメンバー入りしたが、24日のオーストラリアとの壮行試合(京セラドーム大阪)での先発予定を回避することが濃厚になった。有力だったWBC1次ラウンド第2戦の3月3日中国戦(福岡ヤフオクドーム)の先発は白紙で、先発陣の再編成を余儀なくされる危機に立たされた。

 侍ジャパンの節目の日に、先発ローテーションが激震に見舞われる恐れがあることが判明した。宮崎合宿に突入後から右肩の不安がある前田健の最悪の事態を想定し、危機管理のシミュレーションが始まった。山本監督ら首脳陣は当初、24日の壮行試合オーストラリア戦で前田健の先発を予定していたが、回避する方向で検討を開始した。これはWBC本番での登板プランに狂いが生じる、大きなスケジュール変更になる。

 前田健については1次ラウンド第2戦の3月3日の中国戦での投入を予定。中国戦から中6日の登板間隔を逆算し、24日の実戦調整を計画していた。だが、エース田中が先発する前日23日の壮行試合オーストラリア戦に前倒し。前田健は2番手以降の中継ぎで登板するもようだ。登板を前倒しするのは、1日でも早く状態を見極めたいという狙いがある。山本監督は「日に日に状態は上がっている」と前向きだったが、水面下では緊迫感が漂っている。

 本番直前での調整計画の見直しは、そのまま本番の先発陣編成の再考に直結する。23、24日のオーストラリアとの2連戦と26日の阪神戦の3試合は、そのまま1次ラウンド3試合の先発3投手として予定した田中、前田健らの最終実戦の場にする構想だった。前田健の登板前倒しは、1次ラウンド第2戦の中国戦、最終の第3戦キューバ戦の先発投手の練り直しを視野に入れていることを意味する。

 山本監督は前田健について「(今後)上がってくる報告もあってメンバーに入れました」と話したが、万全かどうかについては言及しなかった。前田健はこの日もキャッチボールをした程度で、ブルペン入りせず。「実戦もあと1試合ある。時間もないので、しっかり投げられるように準備したい」と意欲は見せたが、回復の見通しは不透明。前田健の状態の余波で、能見、内海、沢村ら他の代役候補の調整計画に狂いが生じる危険性もある。全13人の投手陣だが、先発2本柱の1人に据えていた前田健の動向が、侍ジャパン投手陣の浮沈のカギを握っている。

 ◆過去のWBC日本代表故障

 06年の第1回大会は壮行試合で黒田(広島)が右手を負傷し、開幕前の2月25日にロングリリーフが可能な久保田(阪神)が代表入り。また、左肩痛で離脱した石井弘(ヤクルト)に代わり、馬原(ソフトバンク)が緊急渡米して2次リーグから合流した。第2回大会は08年12月に黒田(ドジャース)が調整の難しさを理由に辞退。09年1月9日に岩田(阪神)が代表候補に招集された。第2ラウンド最終戦では村田(横浜)が右足を負傷し、栗原(広島)が準決勝から合流した。