侍ジャパンNO・1の快足を誇る糸井嘉男外野手(31)に、「上を向いて走ろう」という珍指令が出された。発端は前夜の台湾戦の1シーンだ。1点を追う4回2死二塁。走者だった糸井が、坂本の遊安で一気に本塁まで突入しようとトップスピードに入った。三塁コーチの高代内野守備走塁コーチが、グラウンドへ寝ころび、体を使って制止。ユーモラスな姿で場内の笑いを誘っていた。

 意外な理由があった。高代コーチは「下を向いて一目散に走ってる」と、糸井が全力疾走した時の傾向を指摘。そのため「彼の目線の下に潜り込み、それで地べたに寝ころぶ形になった」と説明した。指示が分からないままではボーンヘッドにつながる可能性がある。短期決戦では流れを失うような致命傷になる。同コーチは「糸井には下を向いて走るなと言い続けてる」と今後、意識改革を促す。

 ただ一夜明けたこの日、糸井は「あれは(高代コーチが)ただコケただけですよ。見えてましたもん」と潔白を主張した。だが日本ハム監督時代に4年間、プレーを見続けてきた梨田野手総合コーチは「糸井はそういうところがある」と証言した。山本監督も「コケていたなぁ」と苦笑い。高代コーチが試合中に何度も寝ころんでしまうのは、いかがなものか。意見の食い違いはあるが、双方の努力でチームとしても上向きたい。【高山通史】