WBC世界バンタム級王者山中慎介(32=帝拳)が、完勝で8度目の防衛に成功した。同級7位で23戦無敗の挑戦者ディエゴ・サンティリャン(アルゼンチン)を寄せ付けず、左右の強打で圧倒。7回36秒、2度目のダウンを奪ってKO勝ちした。防衛回数を国内歴代5位タイに伸ばし、他団体王者との統一戦や海外での防衛戦などビッグマッチをあらためてアピールした。戦績は23勝(17KO)2分けとなった。

 代名詞の左以上に、右がさえた。山中は「構えた瞬間に有効だと思った」と開始直後から右ジャブでサンティリャンの戦意をつみ取った。一方的な展開で迎えた6回、左ストレートで最初のダウンを奪取。続く7回に一気に決めにいった。ゴングと同時に圧力をかけると、右でガードをこじ開け、再び左。大量の鼻血とともに座り込んだまま動かない挑戦者の姿を尻目に、10カウントのゴングを聞きながら拳を突き上げた。

 無敗の挑戦者を寄せ付けない完勝に「これだけ差があるとは正直思わなかった。最後のが当たった瞬間にこれで終わりだと思った。もう少し歯ごたえがある選手とやりたい」と貫禄十分に言い切った。

 防衛記録は歴代5位タイ、在位期間は3年5カ月にまで伸びた。試合後には防衛を重ねていく中で誕生した長男豪祐(ごうすけ)君(2)、長女の梨理乃ちゃん(1)をリング上で抱き、父の顔を見せた。自宅のリビングには試合後の子供との写真が並ぶ。「比べると子供の成長を実感できるし、見ればもっと増やしたいと思う」。この日の勝利でコレクションはまた1つ増えた。

 2月中旬に行われたV8戦の発表会見で、よどみなく言った。「今回は統一戦にもならなかったし、相手は名のある選手でもない。統一戦が見たいと思わせる試合をする」。バンタム級最強を証明するという目標に向かい、最高の形でアピールに成功すると「もっと注目される試合がしたい」と強い思いを口にした。

 サウスポーであることと、KO率の高さから、世界に名が知れるにつれ、強豪からは対戦を避けられる。それでも本田明彦会長は「防衛回数とか記録を狙っているわけではない。こいつという相手を探さないとモチベーションも難しい」と統一戦も含めた、強敵との対戦を模索していく意向を示した。憧れの辰吉、この日プロの道を歩み始めたその次男寿以輝の前で強さを見せつけた山中が、さらなる高みを目指して歩みを進めていく。【奥山将志】

 ◆山中慎介(やまなか・しんすけ)1982年(昭57)10月11日、滋賀・湖南市生まれ。南京都高1年でボクシングを始める。3年時に国体優勝。専大ボクシング部で主将。06年1月プロデビュー。10年6月に日本バンタム級王座、11年11月にWBC世界バンタム級王座獲得。家族は沙也乃夫人(29)と長男豪祐君(2)、長女梨理乃ちゃん(1)。身長171センチの左ボクサーファイター。