WBA世界フライ級王者井岡一翔(27=井岡)が鮮やかなKOで3度目の防衛に成功した。同級6位キービン・ララ(21)を11回1分11秒、2戦連続となるKOで撃破。長谷川穂積らに並ぶ日本歴代2位の世界戦12勝目を挙げた。次戦大みそかに見据える同級スーパー王者フアンフランシスコ・エストラダ(26)との統一戦へ大きく前進した。井岡の戦績は21戦20勝(12KO)1敗となった。

 猛烈なラッシュだった。11回だ。右ストレートでダメージを与えた井岡が勝負に出た。左右の連打で、ララを仕留めた。果敢に向かってきた相手を、予告通り終盤でリングに沈めた。

 「最後ああいう結果になって良かった」。距離を詰めて振り回してきたララに序盤はてこずった。4回までフルマークで相手につけたジャッジもいた。だが、悪い流れを引きずらないのが3階級王者の強さ。5回から、距離を取る本来のスタイルを取り戻す。抜群の判断力でKOを引き寄せ「任務遂行能力が上がってきた」と自画自賛した。

 成長を続ける井岡の胸の中には“永遠の王者”がいる。80年代初めにWBCフェザー級王座を9度防衛し、王者のまま23歳で交通事故死したサルバドル・サンチェス(メキシコ)だ。「擦りきれるほどビデオを見た」と言う井岡が、感銘したのは技術以上に「脳力」だった。「幅広い選択肢から、状況に合った判断ができるのがすごい」。冷静に敵を見極め、適切なパンチを選んで倒す姿に目を奪われた。今回も1日14ラウンドのスパーを実施し、体と脳をスタミナ切れ寸前にして判断力を強化。少しずつ“永遠の王者”の領域に近づきつつある。

 進化を証明した世界戦12勝目で、ビッグマッチにつなげた。WBAからは既に同級スーパー王者エストラダとの対戦指令を受けている。父一法会長は「GOサインを出す。避ける気はない」と断言。井岡も「望むところです」と堂々と言い切った。次戦は大みそかが有力。もう井岡の目には、王者同士の頂上決戦しか見えていない。【木村有三】