北京五輪柔道100キロ超級金メダリストで総合格闘家の石井慧(22)が戦極への参戦を電撃表明した。1日、都内で会見を行い、日本の総合格闘技団体・戦極と仮契約したと発表。契約期間は約2年、海外の他団体にも出場できるという異例のオプションも結んだ。デビュー戦は早ければ8月2日の「戦極第九陣」(さいたまスーパーアリーナ)になる見込み。来年1月の大会では、戦極のエースで、92年バルセロナ五輪柔道78キロ級金メダルの吉田秀彦(39=吉田道場)との金メダリスト対決実現の可能性も出てきた。

 電撃発表だった。テレビカメラ13台に約100人の報道陣の前で、石井は戦極入りを「石井節」で表明した。

 石井

 今日は石井慧の結婚会見に来ていただき、ありがとうございます。相手は日本人で、戦極という相手と結婚します。

 昨年末「野球でいえばメジャーリーグ」とあこがれる米国総合格闘技団体UFCと独占交渉契約を結んだ。だが、交渉は進まずに同契約期間は今年1月で終了。その後、戦極からオファーが。UFC入りを明言していただけに「1回、口にしたので、やっぱり(発言が)変わるってすごい嫌な部分はあった」と悩んだという。だが、周囲の話を聞いて変化が生じてきた。「いろんな人に相談してきて『初戦からUFC』って人はいなかった」。親交のある大相撲の横綱朝青龍にも「家族に試合を見せることによって親孝行できる。まず最初に見せた方がいいんじゃないか」と助言された。「祖母に生で試合を見せたい」との思いもよぎった。

 戦極の印象も良かった。1月4日に特別ゲストでリングに上がり「あそこまで応援してくれると思ってなくて目頭を熱くした。あの熱気の中で自分も…」との気持ちが芽生え、「日本で試合を見せたい思いが強くなった」と最終決断した。

 戦極を主催するワールドビクトリーロードの國保取締役は契約金については「公開しない契約になっている」としたが、「約2年間、試合数は複数回。海外に関しては出られるオプションをつけています」と明かした。デビュー前の選手には異例の配慮だが、同取締役は「暗いニュースの中、唯一の光。いずれは世界を取る人材」と期待は高い。階級はヘビー級で、早ければ8月の「戦極第九陣」でデビュー。将来的にはエース吉田との対決が期待され、國保取締役も「いちばん面白いカードですよね」と言う。吉田の次戦として有力な、来年1月大会での金メダリスト対決実現の可能性も出てきた。

 石井は今月末にオランダに渡り「60億分の1の男」といわれるヒョードルと合同練習する予定だ。「目標は世界王者。以上です」。石井が戦極の舞台で、世界最強を目指す戦いをスタートさせる。【浜本卓也】