<ノア:選手会興行>◇5日◇東京・ディファ有明◇1800人

 ノアが次期シリーズからあえて「三沢色」を消し、新生ノアとして再出発する。6月13日の試合で急死したノア社長でプロレスラーの三沢光晴さん(享年46)のお別れ会(4日、東京・ディファ有明)から一夜明けた5日、ノアは同会場で2年ぶり7度目の選手会興行を行った。大会終了後に会場スクリーンで生前の三沢さんの映像を流したが、関係者は次期シリーズからは献花台、遺影は置かず、新たな気持ちでスタートすることを明かした。

 この日の選手会主催の興行に、前日4日に同会場で行われた三沢さんのお別れ会を連想させるものはなかった。等身大の遺影、献花台も片付けられ、ノアの聖地が、再び戦いの場に変わった。この日、ノアの関係者は「次期シリーズからは社長の献花台、遺影は置きません。昨日のお別れ会でひと区切りがつきましたので、新たな気持ちでスタートします」と前を見据えた。

 前日は献花台となったリングで、無制限1本勝負のシングルマッチ6試合の激闘が繰り広げられた。選手会長の森嶋猛が、2年ぶりに選手会興行をやりたいと申し出ると、三沢さんは快く「いいよ」と了承した。森嶋は「そういう意味では社長が認めてくれた最後の興行。事故の前からチケットは売れていたし、できる限りのことをやってファンを喜ばせたい」と意気込んでいた。

 選手たちも気持ちを切り替えていた。ファンが綱引きをして対戦相手を決めたシングル戦では、GHCヘビー級王者潮崎豪と、同ジュニアヘビー級王者KENTAが激突。垂直落下式変形リバースDDTでKENTAを破った潮崎は、「前日に献花台となったリングで戦った気持ちは」という質問に、「それはそれ。そんなことを言ってる場合じゃない」とあえて三沢さんへの思いを封印した。

 三沢さんの付け人だった鈴木鼓太郎は、メーンで力皇猛に屈したものの「次のシリーズはオレにかかっている」とジュニアタッグリーグ優勝を宣言。師匠への思いを力強い言葉に置き換えた。大会終了後にはスクリーンで9分間、三沢さんの映像が流れた。ノア旗揚げ時のリング上でのあいさつ、ROHニューヨーク大会でのKENTA戦、ジェットコースターに笑顔で乗るシーン。今回限りという映像を最後に、三沢さんへの思いを胸にしまい込み、ノア戦士が新たなスタートを切る。【塩谷正人】