広末涼子(28)が作家松本清張氏の代表作の映画化「ゼロの焦点」(犬童一心監督)に主演することが8日、分かった。失踪(しっそう)した夫の謎を追いかけるうちに新たな事件に巻き込まれていく主人公を演じる。昭和30年代の北陸を舞台に戦後の混乱が招いた悲劇を描く社会派ミステリー。デビュー15周年を迎えた広末は骨太な人間ドラマに真正面から挑むつもりだ。東宝配給で今秋公開。

 広末が難役に挑む。59年発表の「ゼロの焦点」は、「点と線」「砂の器」と並ぶ清張氏の傑作といわれる。謎を追いかけるヒロインが、社会の不条理や人生の複雑さを知り成長する姿も描かれ、推理小説の枠を超えた人間ドラマと絶賛された。女性の悲劇を女性の視点から描くヒロインミステリーの元祖ともいわれる。映画では揺れ動くヒロインの心理描写も見どころ。犬童監督が配役イメージとしてハリウッド屈指の演技派メリル・ストリープ(59)を挙げるほどの難役だ。

 広末は初の清張作品に「時代性を反映した重厚さがプレッシャーになりそう」と言うが「これまで出合ったことのない次元の世界。やりがいを感じます」。犬童監督からは「真っすぐ生きる姿が参考になる」として、ジャンヌ・ダルク裁判を描いた28年フランス映画「裁かるるジャンヌ」のDVDを渡された。広末は今年デビュー15周年。最近は米アカデミー賞外国語作品賞候補作「おくりびと」の好演も評価され、着実に成長を遂げている。今回の難役も「つらい状況にも持ちこたえ、しっかりと立ち続ける強さを表現できたら」と意欲的に取り組む。

 事件のカギを握る女性2人を中谷美紀(33)木村多江(37)が演じる。中谷は「時代に翻弄(ほんろう)された女性の情念を演じることを楽しみたい」。木村は「松本清張さんの世界観を大切にひたむきに演じたい」と話している。

 「ゼロの焦点」の映画化は、野村芳太郎監督が久我美子を起用した61年の作品以来48年ぶり。清張氏生誕100年を迎えた今年、映画化が実現。撮影はすでに開始しており、北陸地方を中心に各地でロケを行う。