8日に投開票される米大統領選を前に、ハリウッドセレブを巻き込んだ選挙戦もいよいよ大詰めです。過激な発言で大衆の関心を集める共和党のドナルド・トランプ候補と女性初の大統領を目指す民主党のヒラリー・クリントン候補は連日、互いのアラ探しをするゴシップ合戦を繰り広げていますが、ハリウッドセレブの応援合戦はクリントン氏の圧勝に終わりそうです。

 選挙戦最後の週末となった4日、クリントン氏は勝敗の鍵を握るといわれる激戦州の一つ、オハイオ州クリーブランドで大規模な集会を行い、ステージにはビヨンセとジェイZ夫妻が登場。ヒット曲を熱唱し、コンサート会場さながらの熱気に包まれました。「女性のリーダーが国を引っ張る中で娘を育てたい」とビヨンセは観衆に呼びかけ、拍手喝さいを浴びました。その翌日にペンシルベニア州フィラデルフィアで行った集会には、ケイティ・ペリーが登壇。ヒット曲「Roar」を熱唱し、「彼女こそが私たちの大統領よ」と数千人の観衆に向けてクリントン氏への投票を呼びかけました。クリントン陣営は先週末にもジェニファー・ロペスと元夫のマーク・アンソニーが登場するコンサート集会を行っており、著名人を大量投入した選挙戦も佳境に入って盛り上がりを見せています。

 一方のトランプ氏を支持するセレブは、アンジェリーナ・ジョリーの父親でオスカー俳優のジョン・ヴォイトやクリント・イーストウッド、元世界ヘビー級王者のマイク・タイソンや元プロバスケットボールのスター、デニス・ロッドマン、プロレスラーのハルク・ホーガンらごく少数派。共和党員として知られるアーノルド・シュワルツェネッガーまでもが、「1983年に米国市民になって以来初めて、共和党候補に投票しないことにした」と発言するなど、ハリウッドではトランプ氏を支持する人はほとんどいないのが実情です。不人気どころか、ロバート・デ・ニーロから「バカで、卑劣で強欲なペテン師」と罵倒され、「あいつの顔を殴ってやりたい」と言われるほど、アンチ派がいっぱい。それでも強気のトランプ氏は、4日にペンシルベニア州で行った集会で「ここにはギターもピアノもない。いるのは私だけ。私にはJ-Lo(ロペス)もジェイZも必要ない」と、ハリウッドセレブを味方に派手なコンサート集会を展開するクリントン氏を批判。その翌日も、ネバダ州で開かれた集会で「ヒラリー個人では人を集めて会場を埋めることができないから、セレブを使って人集めをしているだけ。詐欺みたいなものじゃないか」とトランプ節をさく裂させ、ハリウッドセレブから多額の献金を受けて派手な選挙戦を繰り広げるクリントン氏を糾弾しています。

 リベラル派が多いハリウッドではもともと民主党支持者が大多数を占めるため、セレブの多くがクリントン氏支持を表明しているのは当たり前と言えば当たり前でしょうが、大統領選が始まった当初はある種の「見世物」的存在で、誰もがトランプ氏がここまで大健闘するとは想像していなかった節があります。台風の目となったトランプ氏は、ここにきて支持率も再上昇しており、苦しい戦いを強いられているクリントン氏はセレブパワーをフル活用して最後の選挙戦を乗り切ろうという腹構えなのでしょう。この作戦が吉と出るか凶と出るか、選挙戦の結果は多くのハリウッドセレブたちもかたずをのんで見守っています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)