劇作家唐十郎(から・じゅうろう)さん(本名大鶴義英=おおつる・よしひで)が4日に急性硬膜下血腫のため亡くなったことを受け、5日、唐さんが主宰する劇団唐組の久保井研(61)が、東京・花園神社境内に設けられた紅テント前で報道陣の取材に応じた。この日から「泥人魚」の公演が行われる。

座長代行として取材に応じた久保井は、初日に向け準備を終えた4日に受け取ったとし「連絡をもらい、幹部役者がお会いすることができました。唐さんは気持ちよく寝ているような顔で、何度か呼んでみましたが、返事をしませんでした。『しっかり初日を開けます』言いました」と話した。唐さんは妻や長男で俳優大鶴義丹らに見守られて亡くなったという。

唐さんが救急搬送されたことを知ったのは、2日に紅テントの設営した後だったそう。ただ「準備して待っていれば唐さんは来てくれると思っていた」と語った。

4月13日に巡業公演に出る前に自宅にあいさつに行った時のことを振り返り、久保井は「唐さんは車が止めてあったところまで歩いて来て、『行ってらっしゃい』と声をかけてくれました。思いのほか足取りがしかりしていて、手を添えるぐらいで歩いていたので、しっかりしてますね、と言ったら『そうなんだよ』と。すごくサービス精神旺盛な方ですから、我々にも手を振ってくれました」と明かした。

「泥人魚」は唐さんの代表作の1つ。東京公演を見てもらうのを楽しみにしていたが、かなわなかった。久保井は「なにより芝居の好きな人だったので、客席の後ろから見守ってくれていると思います」と話した。

唐さんについて久保井は「人と人との絡み合い、人間くささを描きたかった人。それを、とても知的にメタファーに置き換えてせりふにしている。深みにはまる沼のような人、知れば知るほど、どういう人か分からなくなってくる。目指す山ではなくはまる沼のよう」と話し、印象に残っている言葉を聞かれると「とにかく観客は待っている。何があっても芝居はやるんだ。飯を食うように芝居をやる、と言っていました」と明かした。