宝塚歌劇団の創立者小林一三の玄孫(やしゃご)で、元プロテニス選手の松岡修造の長女松岡恵さんが宝塚音楽学校に合格・入学したことで、宝塚歌劇が何かと注目されています。

 恵さんは約1040人が受験し、合格者は40人という競争率26倍を突破して、入学しました。かつては「東の東大、西の宝塚」と言われた難関の宝塚に入るために、予備校もたくさんあります。大学受験の予備校でも、東大受験クラス、早慶受験クラスなどあるように、宝塚の入学試験を想定した歌、ダンスなどのレッスンに特化したもので、週4日から6日もレッスンに明け暮れます。

 これまでに何十人も宝塚音楽学校に送り出しているダンススクールの校長に話を聞くと、「昔に比べると、楽をして入ろうとする子が増えて、きちっとやる子が少なくなった。忍耐、根性がないのよね」と嘆きます。保護者も「このレッスンを受けると、合格できるのか」とすぐに結果を求めるそうです。その中で「努力を惜しまない子、ハングリー精神のある子が合格している。最終的にあきらめない強い心を持つことが重要」と話します。

 恵さんのように1回の受験で合格する子もいれば、3回、4回も受験して、ようやく合格した子もいます。また、音楽学校に入っても、厳しい授業が待っており、入学時の成績、予科(1年)終了時の成績、卒業時の成績が、席次となってついて回ります。ただ、学校の成績がいいからといって、トップスターになれるとは限りません。そこには「スター性」という誰も教えることのできない要素が加わります。真矢みきは入学時の成績は21番と真ん中だったものの、若手時代から個性派として注目され、トップになっています。

 一時、宝塚には「首席卒業者はトップになれない」というジンクスがありました。50期の首席でトップになった汀夏子以降、首席がトップにならない時代が長く続いたからです。そのジンクスを破ったのは77期首席の安蘭けい。若手時代から注目されたのに、トップになったのは入団16年目でした。その後、霧矢大夢、蘭寿とむと首席経験者がトップになっています。

 現在、今春に音楽学校を卒業した40人の初舞台生が宝塚大劇場の雪組公演に出演し、ラインダンスを披露しています。公演後、花、月、雪、星、宙の各組に配属されるため、同期全員で同じ舞台に立つのは最初で最後の機会となります。この中から、誰が未来のトップスターになるのか。原石の中からスターを見いだす、そうところにも宝塚ファンの楽しみがあるようです。【林尚之】