新年は尾上松也(30)の登場から始まります。「新春浅草歌舞伎」(26日まで、東京・浅草公会堂)では、若手たちを引っ張る立場として奮闘中。これまでの経験を糧に、さらなる進化を誓いました。

 浅草歌舞伎には、いろんな思いがある。市川亀治郎(現猿之助)、中村獅童、中村勘太郎(現勘九郎)、中村七之助らが出演していたころから憧れていた。若手が大きな役に挑戦できるチャンスだ。

 「僕もずっと出たかったんです。『ああ、なんでここに入れてくれないんだろう。一緒にやりたいな』と思ってました。そんな思いを抱えて、それをエネルギーにしてました」 初めての出演は09年。2度目は13年。しかし、レギュラーメンバーに定着までにはいかなかった。

 「2度出させてもらって、そのつど、これで浅草レギュラーになれると思ったら、また翌年外れて…というのを繰り返してるんです。複雑な思いが交錯してました。だから毎年、浅草の動向は気になってましたし、常に目標でした」

 昨年、ついに松也が若手たちを引っ張る立場として公演を任された。2年連続となった今年も無事に幕が開いた。責任感も強い。メンバーが日替わりで、素顔で登場する「お年玉あいさつ」では、花道も使い歌舞伎初心者に解説するなど、サービス精神満点だ。

 「去年は1年通じて、どの公演でもチラシに大きく載って、一座の看板役者として出させてもらいました。自分が担う責任や影響を考えるようになりました。特に浅草は、真ん中にいさせてもらえるわけですから、気にすべきところはほかの公演に比べてあります」 夜の部「義経千本桜 川連法眼館の場」では、佐藤忠信、忠信に化けていた源九郎狐の2役に初めて挑んでいる。

 「大変だろうとは想像してました。ある意味、想像通りに大変です(笑い)。本当の忠信の場面と、狐忠信の場面、ざっくり2つに分かれます。楽なように見えて大変なのは、前半、本当の忠信の場面です。少ない時間と少ないせりふ、少ない動きの中で、表現しなくてはいけない。逆に、狐忠信の場面は、自分の思いを存分に語りますから、どれだけ深くたっぷり演じられるか、です」。

 狐忠信になってからは、登場仕方や体の動き、せりふ回しなど、楽しませてくれる。

 「柔らかさプラス、俊敏さ、機敏さがないと、動物っぽくならないので、難しいんです。とにかく体を慣らすしかないですね。考えたり、戸惑わなくてもできるようにしたい」 昨年はミュージカル「エリザベート」にも出演し、大きな経験になった。

 「今年もミュージカルをやる予定です。毎年1本はやりたいです。やりがいを感じてます。昨年は、責任の多い仕事、やりたい仕事をたくさんさせてもらって、役者、人として成長させてもらえました。この経験をきちんと蓄えて、もうひとつレベルアップしたい」 プライベートの目標を色紙にお願いすると、迷わず「自炊」。

 「一時期、母親に教えてもらいながらですけど、料理、スイーツ作りにハマったんです。和洋中、一通りやりましたけど、今は全然。飽きちゃうと一切やらないので、今度は続けたいですね。僕の中で難しい最高峰はアップルパイ。いつか作りたいな」

 手作りのアップルパイが出てきたら女性は狂喜乱舞です、と言うと「でしょう?」とにっこり。

 ◆尾上松也(おのえ・まつや)1985年(昭60)1月30日、東京生まれ。6代目尾上松助の長男。音羽屋。90年、歌舞伎座「伽羅先代萩」で初舞台。歌舞伎以外にも、ミュージカル、映像作品など幅広く活躍。血液型O。新春浅草歌舞伎はほかに、坂東巳之助、中村米吉、中村隼人、坂東新悟、中村国生、中村錦之助らが出演し、1部は「三人吉三巴白浪」「土佐絵」「与話情浮名横櫛」、2部は「毛抜」「義経千本桜」。

 ◆尾上松也が今年の抱負を書いた色紙を読者1人にプレゼントします。希望者ははがきに郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記し、〒104・8055日刊スポーツ文化社会部「歌舞伎の王子様」プレゼント係まで。15日必着。

尾上松也が今年の抱負を書いた色紙
尾上松也が今年の抱負を書いた色紙