◆ズタボロ(日)

 不良映画は熱っぽないとあかん。これは熱っぽい。カッコだけ、口だけのヘタレのガキが、場数を踏んで「男」になる-。そんな男の永遠の憧れがびしっと詰まってる。原作の自伝的小説「メタボロ」「ズタボロ」書いたゲッツ板谷、元東映社員の橋本一監督、名作「凶悪」も担当した脚本の高橋泉氏。オトナになりきれん部分を残してる(?)スタッフが、すてきな1本をつくらはった。

 ヤキを入れられるだけの族暮らしに嫌気が差したコーイチ(永瀬匡)が、高校の植木(堀井新太)や“鬼”(成田瑛基)とつるみ始めるが、今度は新宿の族にボコボコにされて…。

 「クローズ」ほどスタイリッシュやなく、泥臭い。主演の永瀬が「ビー・バップ-」で加藤を演じた清水宏次朗っぽくてチャラいけど、根っこにあるのはゴツゴツしたリアリティー。見てて「痛っ!」と思う場面がたくさんある。

 いきがるガキにホンマの怖さ、痛みを教える“悪いオトナ”が、またエエ。コーイチの叔父でやくざの組長に、平田満。冷たい迫力満点や。その兄弟分に佐藤二朗。オペラ好きでへらへらしながら、指詰める怪演はすごい。恐れ入った。【加藤裕一】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)