◆マッドマックス 怒りのデス・ロード(米)

 主人公の元警官マックスは荒々しいが潔い。36年前の第1作では、黒沢明監督が描く孤高の浪人になぞらえられ、北欧では一匹おおかみのバイキング戦士に重ねられた。海外の反響は、年月を経てジョージ・ミラー監督の中でどんどん膨らんだようで、無国籍的な近未来は極まった感がある。

 水も石油も尽きかけた世界で、恐怖統治を敷く軍団にマックスと女性戦士フュリオサが戦いを挑む。砂漠を走る巨大なタンクローリーは空母のようだし、群がる4輪駆動からは長尺の棒のしなりを利用して軍団員が飛びかかってくる。

 海賊の襲来というよりシルク・ドゥ・ソレイユの大技を見るようだ。CGを排したアクションの連続に息が詰まる。

 マックスには「ダークナイト・ライジング」(12年)で仮面の悪役を演じたトム・ハーディー。クセのある個性が主人公の屈折にはまる。初代メル・ギブソンより外見も中身も肉厚の印象だ。フュリオサのシャーリーズ・セロンは丸刈りにしても、顔にグリースを塗ってもやはり美しい。敵役ジョーはオーストラリアを代表する名優ヒュー・キース=バーン。鉄製マスクから醜怪なキャラがはみ出る好演だ。【相原斎】

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