競技かるたに打ち込む高校生を描いた2部作の前編。競技かるたが、優美に百人一首を読んで「ハイッ」と札を取るようなものではないことは、少しは知っていた。が、ここまで激しくて熱いものだったとは。

 競技かるたの激しくて熱い部分を、ぎゅーっと固めて1人の人間にしたら、主人公の千早(広瀬すず)だ。千早の魅力を、広瀬が全身で表現している。競技に集中する時の息遣い、札を取らんとする時の構え、かるた部創設のため、奏(上白石萌音)に目を付け突進する時の目ぢから、喜びの涙。躍動感と青春っぷりに圧倒された。

 かるたの激しく熱い部分をぎゅーっと固めた千早、と書いたが、心(しん)にある魅力は、本能的に人の心をおもんぱかれるところ。優しい心のある、猪突(ちょとつ)猛進、剛速球、パワフルなヒロインだ。

 千早らかるた部5人(野村周平ら)のキャラクターがそれぞれ立っていて、幼なじみの新(真剣佑)も含め、どの人物も好きになれる。畳をたたく音や、取りたいと念ずる札に浮かぶ文字など、音と映像の表現も心地よい。上の句は、高校でのかるた部創設から東京都大会まで。下の句(4月29日公開)が待ち遠しい。【小林千穂】

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