1950年代、アイルランドからニューヨークに渡ったエイリシュ(シアーシャ・ローナン)は高級デパートに勤め、簿記を習い、いかにもなニューヨーカーになって、イタリア人配管工トニーと恋に落ち、結婚する。ところが、姉の悲報で故郷に戻ると紳士的なジムと再会して…。

 女は怖い。心底ほれてくれたトニーがおるのに、ジムになびく。しかも既婚の事実を隠すずるさ。ひどい話の“逆木綿のハンカチーフ”で男がかわいそうなんやが、ラストシーンで許せてまうんですわ、これが。「こんな女がまたええねん」と思わせる、シアーシャ・ローナンが怖い。

 びっくりするほど美人やないのにソソられる。まるでジェニファー・ローレンスや黒木華みたい…って、比較がグローバルすぎる気もするが、まあ“恐るべき22歳”なんは間違いない。11年公開「ハンナ」で暗殺者として育てられた少女を演じた子役がすくすく育って、今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたんもようわかります。

 この手の女に弱い男って、多いんですわ。なんべん痛い目にあっても懲りずに、別の似た子にひかれてまう、オレみたいな男が。【加藤裕一】

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