頭脳を他人の体に移植して、永遠の命を得る-。もう近未来SFっちゅうほど新鮮なテーマやないが、映画は実にしっかりしてる。

 余命半年の建築家ダミアン(ベン・キングスレー)。「NYを作った男」と言われる大富豪は「遺伝子操作で作った体に記憶を転送しないか」という科学者オルブライト(マシュー・グード)の誘いに乗り、大金を払って転生した。しかし、後遺症防止の薬を飲み忘れ、リアルな幻覚が…。作られたはずの体は、元特殊部隊マーク(ライアン・レイノルズ)のものだった。

 SF的要素より、ヒューマンな要素がおもろい。知らんこととはいえ、乗っ取った体の持ち主には妻と娘がおった。転生以前に、絶縁状態の娘から傲慢(ごうまん)さをののしられ、己の生きざまを後悔し出していただけに、そのショックの大きさたるや…。

 傲岸(ごうがん)不遜な男が死に直面して、変わる。マークの体を持ったダミアンの下す、最後の決断の潔さ。演じたレイノルズがかっこよかった。大仰に言えば「いかに生きるか」なんやが「デッド・プール」のおバカ演技がウソみたい。将来オスカー取る役者なんやろうな。【加藤裕一】

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