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映画この一本

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 洋邦問わず、日刊スポーツの映画担当記者がオススメ映画を紹介します。

生まれて初 ハエに感情移入

[2013年10月27日9時17分 紙面から]

◆マッキー(印)

 インド映画です。インドがボンベイ(今はムンバイ)を“ボリウッド”と言うて、年間数千本も映画を生み出す大国なんは、結構知られた話です。けど、日本で全国公開される作品は一握り。その1本がコレ。珍妙な作風だけに「社会現象なったりして…」とひそかに期待しております。

 恋敵に殺された男が、ハエに転生し、愛する女を守って戦う-。「ザ・フライ」みたいやけど、そういう映画やありません。ハエに転生した後、セリフがぐっと減る。ハエの動きと表情で訴える手法は、チャプリンとか、ちょっと無声映画みたいで、妙に楽しい。主人公の複眼目線とか、細部にこだわってる。実にええ感じです。

 生まれて初めて、ハエに感情移入してしまいました。まとわりつく。イライラさせる。精神的に追い詰める。さらには、自分が殺された男の生まれ変わりやと、敵に、彼女に伝えて、復讐(ふくしゅう)を加速させる。その伝え方がまたおもろい。ミニチュアアートの上手な彼女が作った金属で武装して戦う。「そんなハエ、おるか!」と笑いながら、ツッコむんがまた楽しかったりするんやが、不覚にもクライマックスで感動してしもたり。

 インド映画らしく、常に音楽が、歌がある。登場人物のキャラ設定が粗っぽくて、役者の演技も大げさ。ところが、作り手の熱さを感じるもんやから、昔の日本映画みたいで、懐かしかったりする。

 あのハエのストラップ、売ってへんかな?【加藤裕一】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)

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