映画この一本
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痛いほどの絆
[2013年12月8日9時56分 紙面から]
◆リヴ&イングマール ある愛の風景(ノルウェー・スウェーデン・イギリス・チェコ・インド合作)
日本で言えば小津安二郎監督と原節子が思い浮かぶ。名作の裏には巨匠と主演女優の絆がある。
イングマール・ベルイマン監督とリヴ・ウルマンは47年間でコンビ作10本を生み出している。その間、不倫愛に始まり、5年の同居、破局、そして愛憎を超えた友情にたどり着く。
75歳になるウルマンのインタビューを軸にベルイマン作品の名場面が挿入され、2人の実像と作品内の男女が二重写しとなる。巨匠と世界的女優の素顔は恋愛感情の中で時に幼く、過ぎた熱情は滑稽でさえある。
07年のベルイマン死去にも沈黙を守ったウルマンの告白そのものが興味深い。ドキュメンタリーならではの大小の「奇跡」がちりばめられている。かつて2人が暮らしたコテージでのインタビュー中、監督愛蔵のテディベアのぬいぐるみを手にしていたウルマンがその中からラブレターを発見する。思いがよみがえり、ほおを伝う涙が止まらない。ベルイマンが落書きしたドアのハートマーク。何度もなぞった跡がある。ウルマンはうれしそうに手を添える。
クライマックスは「虫の知らせ」にウルマンがチャーター機を飛ばし、監督の臨終に最後の言葉を交わしたエピソード。「彼は今でも時々私の周りに現れる。雲になったり、ハエの群れになったり…」。少し間を置いた終盤に実は小さな「奇跡」を発見してしまった。彼女の周囲をうろうろと飛ぶ1匹のハエである。
「異例の共演」は巨匠のちゃめっ気なのだろうか。隅々まで2人の「痛いほどの絆」が伝わってくる作品である。【相原斎】
(このコラムの更新は毎週日曜日です)
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