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映画この一本

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 洋邦問わず、日刊スポーツの映画担当記者がオススメ映画を紹介します。

無駄なし!91分 出演者2人だけ

[2013年12月15日10時24分 紙面から]

◆ゼロ・グラビティ(米)

 宇宙という存在の怖さと、人間の無力さを、イヤというほど思い知らされる映画だ。

 2時間超の作品が多い中、上映時間はたった91分。やっていることと言えば、宇宙をさまよう破片の嵐に巻き込まれ、命綱のスペースシャトルを壊された宇宙飛行士たちが、地球への帰還を目指す。それだけだ。不必要な要素は徹底的に排除されているから、集中力が切れることなく、一気に見られる。

 無駄がないのは、演出も同じ。描かれているのは、ひたすら宇宙空間。音楽すらほとんどない。SFと言えば、壮大なクラシックと相場が決まっていると思ったら、大間違い。むしろ、音楽を流さないことで、宇宙空間の静けさ、大きさ、そして孤独が表現されている。静寂の中でも動きがきちんとあるから、間延び感もない。

 出演者なんて、たった2人ですよ? 宇宙飛行士のストーン(サンドラ・ブロック)と、コワルスキー(ジョージ・クルーニー)だけ。ええ、あとの人は声だけの出演です。とはいえ、2人の心理状況の描き方が抜群だ。宇宙空間に投げ出され、止める手だてのないブロックに、能天気に宇宙遊泳時間の記録更新を狙うクルーニー。ブロックが家族について少しだけ語る部分があるが、極論を言えば、それさえ不要だったかもしれない。

 1つのテーマで描き切る、その潔さに脱帽。最近、映画を見ても集中力が切れたり、寝ちゃったりする方には、大オススメだ。【森本隆】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)

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