◆万能鑑定士Q モナ・リザの瞳(日)

 人の生き死にが描かれない「安心、安全な推理小説」の初映像化。芸術作品や骨董(こっとう)品まで、圧倒的な知識量と観察眼を誇る女性鑑定士(綾瀬はるか)が、名画モナリザの40年ぶりの来日にあたり、臨時学芸員を務めることに。しかし、モナリザを深く学ぶほど、不思議と鑑定能力が失われていく。

 綾瀬が凜(りん)としたキレ者鑑定士を好演した。理路整然とした語り口に、ややほんわかさを残したあたりは、沖縄の離島育ちという設定を微妙に意識しており、柔軟性にただただ感心する。

 凛田の能力に強く興味を持ち、取材攻勢をかける雑誌編集者に松坂桃李。三枚目役だが、どこか二枚目さがにじみ出る。妻夫木聡のように振り切ってもいい。生まれながらのイケメン、いいなあ…。

 インパクトある描写、場面が少ない分、スピード感が欲しかった。ルーブル美術館の協力も得たわけだし、もう少しフランスっぽさを出した方がよかったかもしれない。

 原作小説も多数、出ており、シリーズ化やテレビドラマ化など、角川お得意のメディアミックスにはまりそう。続編に期待。【森本隆】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)