宝塚 ~ 朗らかに ~
夢の舞台を創り続けて100年あまり。時代とともにスターを生み、話題作を手掛けてきた宝塚歌劇団。華やかなステージを作り続ける裏側で日々、厳しいけいこと競争の中で切磋琢磨を続けている夕カラジェンヌの横顔を伝えます。
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「挑戦」裾野広げるオモロヅカ!?/轟悠
[2013年9月26日9時23分 紙面から]
- バウ・コメディ「第二章」の主人公を演じる轟悠は熱い思いを語った(撮影・築山幸雄)
宝塚歌劇団の理事でもある専科スター轟悠が、米劇作家ニール・サイモン氏原作の「バウ・コメディ 第二章」(兵庫・宝塚バウホール、10月3〜14日)に主演する。ニール・サイモン作品は、一昨年の「おかしな二人」に続く第2弾。来年100周年を迎える劇団にとって、専科コメディー作をシリーズ化したいねらいもあり、轟も「ひとつの挑戦」ととらえている。
元トップスターで、来年100周年を迎える劇団の理事。昨年夏に亡くなった春日野八千代さんの後継とも期待され専科に移った轟が、再び、ニール・サイモン氏のコメディーに主演する。妻を亡くした男と、バツイチ女優の恋、人間模様を描いた「第二章」。一昨年バウで上演した「おかしな二人」に次ぐ第2弾だ。
「ニール・サイモン先生もご存命でいらっしゃり、前回(おかしな二人)、好評をいただきましたので、2回目もやっぱり。100周年に向けて、宝塚で(バウ・コメディーの)シリーズとして、裾野を広げたい。ひとつの挑戦でもあるのではないかと思います」
前作バウ公演は、退団した未沙のえると「おかしな二人」で、男同士の奇妙な関係を演じた。今回は、星組娘役トップの夢咲ねねが相手役。轟演じるまじめな兄とは対照的な「ちゃらんぽらんな弟」に専科の英真なおき、夢咲の女優仲間に星組6年目の娘役、早乙女わかばが出演する。
「出演は4人だけ。40代の男性陣、30代の女性陣の微妙なずれを描くんですけど、私の役はまじめな劇作家で、今回はきちょうめんな男。ずぼらじゃない。散らかしもしないし、いすの上にも立ちません」
「おかしな-」は、ずぼら男で、部屋には物が散乱している設定。いすの上に立つなど、上品とは言いがたい場面も多く、轟は「きちょうめんな私と真逆」と言っていたが「今回は、性格通り」と笑う。
今回の難所は別にある。ニール・サイモン氏の作品はしゃれた会話劇であり、セリフを交わすテンポ、間合いには腕が要求される。
「そこが大事。前回のおけいこ、未沙さんを思い出して、参考にしています。ふと、おけいこ場で初めて立ち会ったときのことなんかも…。前回、面白く、いい勉強をさせてもらえました。今回も『セリフの闘いが始まるのか』って。(会話劇は)何十、何百と、やり方があると思う。ひと場面終わるごとに、英真さんでさえ『ああ、もう今日の営業終了!』って言いながら、なんですけど」
けいこ場での4人の集中力は相当なようだ。今作品は映画化(79年)もされており、きわどいラブシーンや、ソファを投げるような場面もあるが、さすがに「そこは宝塚チックに」と、過激演出はなさそう。気の張った日々、リラックス法は香りだという。
「自分の部屋は、リラックスできる空間になるように。ホテルのようなオレンジ系の照明にして、空気はきれいにしていますね。そして、アロマで香りを。お部屋もですけど、お風呂に入るときも、お気に入りのオイルを垂らしたり」
香りも気分で変える。
「疲れているとき、すっきりさせたいときはかんきつ系、違う気分のときは森林の香り。山の中育ちなので(笑い)。ひのきとか」
オフタイムは自分をいたわり、舞台への活力につなげる。今年3月にはシアター・ドラマシティで主演舞台「南太平洋」があった。今後は、10月25日に「第52回宝塚舞踊会」が控え、来年1月には梅田芸術劇場の月組公演「風と共に去りぬ」に出演し、はまり役のレット・バトラーを演じる。
「ベル(サイユの)ばらとともに、幾たびも、再演されている作品。体の向き、歩数まで決まっている場面もあるほど、形式美が受け継がれてもいます。下級生たちに継承していかなきゃならないと思います」
スカーレットは、月組トップの龍真咲が演じ、すでにポスター撮影を終えた。「彼女、ずっと、お化粧のおけいこをしていました。写真で見ると、この辺(目のあたり)がアサコ(元月組トップの瀬奈じゅん)に似ているんです。私、アサコとも(風と-を)やったことがありまして…」。
龍には伝えなかったが、ほほ笑ましく見ていたという。100周年へ活気づく劇団の空気を肌で感じ、理事として101年へつなげていく義務もある。
「春日野先生によみがえっていただきたい。でも、今いる生徒それぞれが、宝塚歌劇の100周年という責任をもって進むしかない」。もちろん、轟がその模範になる。【村上久美子】
◆バウ・コメディ「第二章」(原作=ニール・サイモン氏、脚色・演出=石田昌也氏)ブロードウェイの喜劇王、ニール・サイモン氏の戯曲が原作。最愛の妻を失ったショックを引きずるジョージ(轟)が、離婚したばかりの女優ジェニファー(夢咲)と出会い再婚。だが、ジョージはふとした拍子に先妻を思い出し、ジェニファーとのけんかは絶えない。ジョージの弟を英真、ジェニファーの女優仲間が早乙女。一昨年、昨年と兵庫、東京で上演された「おかしな二人」に続く、専科公演コメディーシリーズの第2弾。
☆轟悠(とどろき・ゆう)8月11日、熊本県生まれ。85年「愛あれば命は永遠に」で初舞台。月組配属。88年雪組へ。97年同組トップ就任。00年「凱旋門」で文化庁芸術祭優秀賞、02年「風と共に去りぬ」で菊田一夫演劇賞を受賞。02年に専科。03年、歌劇団理事に就任した。一昨年、昨年は喜劇「おかしな二人」に主演。昨年は「エリザベート・スペシャルガラ・コンサート」で外部出演。今年3月は「南太平洋」主演。趣味は海外旅行、油彩画、デッサン画。168センチ。愛称「トム」「イシサン」。
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