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宝塚 ~ 朗らかに ~

宝塚 ~ 朗らかに ~

 夢の舞台を創り続けて100年あまり。時代とともにスターを生み、話題作を手掛けてきた宝塚歌劇団。華やかなステージを作り続ける裏側で日々、厳しいけいこと競争の中で切磋琢磨を続けている夕カラジェンヌの横顔を伝えます。

宝塚版・草刈民代になりきる!/早霧せいな

[2013年11月14日9時40分 紙面から]

「Shall we ダンス?」で女役に挑んでいる早霧せいな(撮影・渦原淳)
「Shall we ダンス?」で女役に挑んでいる早霧せいな(撮影・渦原淳)

 雪組2番手スター早霧せいなが、兵庫・宝塚大劇場で上演されている周防正行監督の映画をミュージカル化した「Shall we ダンス?」(12月12日千秋楽)で、女役に挑戦している。映画では草刈民代が演じた主人公を指導する女性ダンス教師役だ。役柄ごとに着想の起点となる役者をイメージして、細部から作り上げるタイプ。「今回は草刈民代さんです!」。直球勝負で、宝塚版・草刈に体当たりしている。東京宝塚劇場は来年1月2日〜2月9日まで。

 「今回は素直に草刈さんです。はい。分かりやすく! あははは!」。繊細そうな美形のルックスと、快活というより豪快な笑い。裏腹のギャップが魅力だ。

 役柄は「細部から作り込んでいく」タイプ。理想を求めて親友とたもとを分かつ役柄を演じたときはドラマ「運命の人」の本木雅弘を、狂気の天才ダンサー、ニジンスキー役はドラマで尾崎豊を演じた成宮寛貴を、「仮面の男」の三銃士役は映画「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」のジョニー・デップをイメージした。

 今回は、映画で自身の演じる役柄にふんした草刈。あらためて映画を見直した。草刈は当時、現役バレエダンサー。自らを律し練習を重ね、舞台で踊り続けてきた。そんな彼女の強さがにじみ出た役だった。

 「強い女性という意味では(前回の大劇場作の)オスカルより、今回の方がずっと強い。嫌な物は嫌と言い、挫折を経験しながらそれを表に出さないで、強がって生きている。そこは男役に通じると思う」

 個人的にも、弱さを見せず、強く生きる姿に共感した。「お客様に夢を見ていただくために『宝塚の早霧せいな』という自分を作っている部分はあります。強がっているわけではないですが、どこか共通するものがあると思うんです」。

 強い精神力に、端正な顔立ちとスリムな体。周囲から「役柄に合っている」と言われても、早霧には不安があった。そもそも当初、映画で竹中直人が演じた役柄になると思っていた。「順番からいくと…。ですよね? まさか自分が女役とは。衝撃でした」。

 女役は普段の髪形、アクセサリーから役作りをすることもあるが、早霧は「どうも私はかわいいものが好きじゃない(笑い)。女役さんが貸してくれたカチューシャなどを身につけてましたけど」。男役が女役を演じる場合の方法論は多様だが、早霧は「男役・早霧せいな」を崩さないと決めているからだ。

 「もちろん、けいこ場ではスカートをはいて、女性らしい色づかいも意識していました。でも、普段は(スカート着用は)ないです。そこは、絶対。私はファンの方の思いもくみ、常に男役であることを忘れずにいたいな、と思うから」

 根底に男役の自分がいる。組子から心配されるほどのめり込む性格だが、今回の女役経験で、役柄を客観的に見る力も増してきた。

 「私にとってベストな職業は男役だと思っているので、180度違うことをしていると感じる経験は、絶対、男役にプラスに跳ね返ってくる。今後の宝塚人生において、確実に意味があると思っています」

 ただ、街中に貼られた公演ポスターは、男役・早霧として直視できない。

 「見えたら、目をそらします。(ポスターの)グリーンと赤の色彩が目に入ったら、近づかないように(笑い)。自分じゃないような気持ち。だってこんなに肩が! 肩見せたの、ラインダンス以来ですよ!」

 ただ、そんな懸念も後に草刈と結婚した周防監督が打ち消してくれた。監督は「大丈夫、うちの奥さんも男らしいから」と言い、早霧も「だったら大丈夫だなって思いました」。今作は、本拠地の今年ラスト公演、100周年の来年は東京での幕開け作になる。多忙な年末年始になるが、体調管理のコツも個性的だ。

 「炭酸ガス(二酸化炭素)のボトル入浴剤を、ぜいたくにも1回に1本全部入れるんです。1本で12回分ぐらいなんですけど、1回で入れたらすごいんですよ。お風呂の中でバンッ! と炭酸ガスが! 振り付けなどで疲れた体が一気にリフレッシュできて、気持ちいいんですよ」

 一方で、食事には無頓着。仕事に集中すると、食欲がなくなるという。「だからみんな、差し入れをくれますね。もらったら食べるみたいな(笑い)。気分転換もできなくなって、携帯ゲームも手が出ない感じ。でも、いい(高機能)マットで寝ることに味をしめまして…気持ちいいです」。

 仲間の信頼も厚く、絆を実感。積み重ねたキャリアを胸に、草刈のような同性も憧れる「女」になりきっている。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「Shall we ダンス?」(脚本・演出=小柳奈穂子氏)周防正行氏の原案・脚本・監督による映画をもとに初のミュージカル化。映画は役所広司、草刈民代が主演し、社交ダンス教室を舞台にしたハートフルコメディー。96年度の日本アカデミー賞で13部門を独占した。海外でもヒットし、04年にはリメーク版のハリウッド映画も作られた。

 ◆ショー・ビッグモニュメント「CONGRATULATIONS 宝塚!!」(作・演出=藤井大介氏)フレンチカンカン、リオのカーニバルなど、世界的に有名な祭事をイメージした場面を盛り込む。

 ☆早霧(さぎり)せいな 9月18日、長崎・佐世保生まれ。県立佐世保西高を経て01年「ベルサイユのばら2001」で初舞台。宙組配属。06年4月「NEVER SAY GOODBYE」で新人公演初主役。09年2月に雪組へ。11年4月、バウ公演「ニジンスキー」で単独初主演。昨年夏にバウ公演「双曲線上のカルテ」主演。12年10月「JIN-仁-」で坂本龍馬、今年4月「ベルサイユのばら-フェルゼン編」ではオスカルなど。同9月にディナーショー開催。身長168センチ。愛称「ちぎ」。

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