日刊スポーツのニュースサイト、ニッカンスポーツ・コムです。


宝塚 ~ 朗らかに ~

宝塚 ~ 朗らかに ~

 夢の舞台を創り続けて100年あまり。時代とともにスターを生み、話題作を手掛けてきた宝塚歌劇団。華やかなステージを作り続ける裏側で日々、厳しいけいこと競争の中で切磋琢磨を続けている夕カラジェンヌの横顔を伝えます。

聴きま専科?歌でつむぐ大人の恋/北翔海莉

[2013年11月21日9時1分 紙面から]

笑顔で意気込みを語る男役スター北翔海莉(撮影・奥田泰也)
笑顔で意気込みを語る男役スター北翔海莉(撮影・奥田泰也)

 昨年7月に専科へ移った男役スター北翔海莉が、有名なオペレッタをミュージカル化した月組ミュージカル「THE MERRY WIDOW」に主演する。歌、ダンス、演技と3拍子そろい、高く評価されている北翔が、中でも自信のある歌唱力を存分に披露する。「歌一本で勝負します」。来年は、元日開幕の星組公演「眠らない男 ナポレオン」に出演。これで専科に移り、直近在籍の宙組以外では、全組出演を達成する。主演公演はシアター・ドラマシティ(大阪)が23日〜12月1日、日本青年館(東京)は12月6〜11日。

 専科へ移って約1年半。持ち前の高いスキルにスタイリッシュさも増した北翔が、オペレッタに挑戦する。ドラマシティは初主演。

 「初めてで緊張する部分はありますね。これまでタップを踏んだり、笛を吹いたり、ピアノの弾き語りがあったりと、何らかのパフォーマンスがあったんですけど、今回は(演出の)谷(正純)先生から『歌一本で勝負しないか』と言われて…。だから、何も頼る物がないというか(笑い)」

 ウィーンでは年末恒例のオペレッタ(喜歌劇)が原作。表現法、歌い方と要求されるものが従来の舞台とは異なる。歌唱力には定評があるが…。

 「えへへへ…そうなんですけど(笑い)。オペレッタ(が原作)なんで! さらに自分の歌唱力に磨きをかけねば。原作ファンの方もきちんと喜んでいただけるような出来にしたい。そして100周年を迎えるにあたり、宝塚歌劇はこういうジャンルもきっちりやります、というのを見せねば、と思っています」

 照れ笑いの裏に、積み重ねてきたキャリアに基づいた確固たる自負がのぞく。音楽学校時代は、歌もダンスも芝居も劣等生。教室の隅っこに隠れているような生徒だった。だが、地道に努力を重ね、そのすべてを高い水準まで引き上げた。3拍子そろった男役スターと言われる今も、努力する才能は揺るがない。

 「何かに秀でた人が専科に行くのだと思っていましたし、それだけの引き出しを持っていないと専科とは言えない。だから(専科異動により)1から磨きをかけないといけない、と身も引き締まりました」

 下級生の頃、専科の先輩に相談をすれば、何でも教えてもらえると思っていた。今、その立場に自分が立った。「(各組で)所作ひとつ、組子から相談されます。今まで以上に勉強しないと、と思っています」。

 自組での自分の立ち位置、役割を考える意識付けから「解放された」と話す一方で、専科ゆえに「その組のスパイスにならなければいけない」とも考える。そこへ舞い込んできた主演公演は、公爵と夫を亡くした女性が大人の恋の駆け引きを展開する有名な喜歌劇だ。

 主人公は、別れた恋人に未練がある。「思いを断とうと女と遊び、酒を飲む。再会していさかうが、明るいケンカ。大人の恋の駆け引きをおもしろく、楽しく表現したい」。細かな感情の起伏を、膨大なセリフと歌で表現していく。

 「原作とほぼ同じでずっと楽曲が流れていて、誰かが歌っている。私はソロだけで9曲あります。コーラスの厚みも違い、重量感を出し、劇場外まで包み込むように歌わないと」

 そこで命綱となるのは、替えの効かない楽器。つまり、のどだ。そのケアは?

 「それが、あんまりしてないんです! 私、歌っているときが一番、のどが楽。泣き叫ぶとか、怒鳴り散らすような役だとすぐに痛めてしまうんですけど。今回はずっと歌っているので逆に、負担が少ない。大声を出してのどを痛めると、千秋楽まで治らないんですが、それでも歌を歌うことはできるんです。使う声帯が違うのかな(笑い)」

 今公演は大阪、東京で12月半ばまで続き、来年1月1日開幕の星組トップスター柚希礼音主演「眠らない男 ナポレオン」への出演も決まっている。

 「(閉幕から次作まで)2週間で何とか…。でも、専科は演出家の方に声を掛けていただかないと出演できないので、呼んでもらえる役者でいたい。実は人見知りなので、毎回、転校生みたいな気分。行った先々で、相手をしっかり見るようになり、(芝居の出方を)見抜く力と対応する力が身についたと思います」

 トップの個性で各組の雰囲気は違う。来年の星組公演で、直近まで属した宙組以外では、全組出演を果たす。「全組制覇です!」。どこでも光輝く宝石は、自らを磨き続け、よりきらめきを放つ。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「メリー・ウィドウ〜オペレッタ『メリー・ウィドウ』より〜」(原作=フランツ・レハール氏、脚本・演出=谷正純氏) ダニロ男爵(北翔)は、平民の娘ハンナ(咲妃みゆ)と恋仲だったが、身分違いから悩み、優柔不断な男爵に愛想を尽かしたハンナは資産家と結婚する。だがハンナは夫を亡くし、男爵と再会するが…。ウィーンでは年末恒例のオペレッタとして有名な喜歌劇。笑いをふんだんに含み、大人の恋の物語が優美な楽曲でつづられる。

 ☆北翔海莉(ほくしょう・かいり)3月19日、千葉県松戸市生まれ。市立第二中を経て、98年「シトラスの風」で初舞台。月組配属。03年4月「シニョール ドン・ファン」で新人公演初主演。03年「恋天狗」でバウ初主演。06年宙組に組替え。08年「雨に唄えば」で初の女役。昨年7月、専科へ移り同10月雪組「JIN-仁-」、今年2月花組「オーシャンズ11」、同7月月組「ルパン」に出演。身長169・4センチ。愛称「みっちゃん」。

プレシャス!宝塚の最新記事





日刊スポーツ購読申し込み 日刊スポーツ映画大賞