宝塚 ~ 朗らかに ~
夢の舞台を創り続けて100年あまり。時代とともにスターを生み、話題作を手掛けてきた宝塚歌劇団。華やかなステージを作り続ける裏側で日々、厳しいけいこと競争の中で切磋琢磨を続けている夕カラジェンヌの横顔を伝えます。
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今年は宝塚漬け/轟悠
[2014年1月9日9時17分 紙面から]
- 「風と共に去りぬ」でバトラー役に挑む轟悠(撮影・渦原淳)
100周年イヤーに入った宝塚歌劇団の理事で元雪組トップ、専科スターの轟悠が、4度目のレット・バトラーを演じる。11日に大阪・梅田芸術劇場で開幕する月組公演「風と共に去りぬ」(27日まで)で、スカーレットに挑む同組トップ龍真咲とともに、名作に臨む。「はまり役」の轟バトラーは02年以来、約12年ぶり。今春には、大阪・池田市の逸翁美術館で、自身やタカラジェンヌOGらの絵画の展覧会が予定されていることも明かした。宝塚100年の“顔”として、祝祭年のスタートを切る。
新年元旦。100周年イヤーは、各組トップ5人、そして轟らスターが勢ぞろいして口上。華やかな幕開けのセンターは轟だった。
「やはり(元劇団理事長の故小林)公平先生、春日野(八千代)先生にいていただきたかった。自分の立場を理解しているつもりですが、重すぎる責任を…。でも、一方で『分かっているでしょ』と自分に言い聞かせている面もあります」
宝塚100年の顔としての自覚は胸にしっかりとある。今春、油彩画などを趣味とする自身にとって特別なイベントが控えていることも明かしてくれた。
「実は、100周年を記念して逸翁美術館で(絵画が趣味の)春日野先生やOGの方々、私の作品が展示されるんです。私の絵は全部で36点ほどでしょうか。絵を描いて欲しいと依頼がありまして。お休みは小旅行だけにし、ほぼ絵を描いていました。まだ完成していないものもあるので、ちょっと焦っていますが」
趣味さえも、愛する劇団の記念イヤーにつながる。そんな轟の100周年幕開けとなる舞台は、名作「風と共に去りぬ」。宝塚・究極の男役とされ、自身のはまり役と言われるレット・バトラーを演じる。
「また、バトラー役で(同作を)やるとは思っておりませんでした。過去にスカーレット編、バトラー編、総集編と3パターンを経験した自分が、今回また新しい月組のメンバーとやる。ひとつ何か、自分で確認できる作品なのかな」
入団9年目だった94年、一路真輝がスカーレットを演じたスカーレット編でバトラー(役がわり)を演じ、雪組トップに就いた98年にはバトラー編に主演。専科へ移った02年、劇団初の日生劇場公演として総集編にバトラー役で主演。この舞台は日本映画批評家大賞ミュージカル賞を、轟は菊田一夫演劇賞を受賞した。
「成長するにはぴったりの役柄。今回は(02年)日生バージョンをベースに(3時間半から)絞り込んで。今回1度だけ日生の映像を見たんですが、どうしても自分の欠点を探してしまって嫌になりました」
もともと、轟は自身の出演作は見ない。今回、流れの再確認のために見たそうだが「自分自身が残念だった」ため、途中でやめた。
「バトラーの魅力は(南北戦争時の)南部の男でありながら、南部のためにって考えだけじゃない生き方ができること。全部が難しい。だって、お客さまが一番よく(魅力を)見えていますから。相手役によって変わる部分もあると思います」
月組公演となる今回は、同組トップの龍がスカーレットに挑戦する。
「彼女自身がエネルギーを蓄えていて、ある意味ぴったり。心からのエネルギッシュさで、純粋に取り組んでいる。ものすごくかわいいときも、肩で風切ってすごく男役というときも(笑い)。でも、声のトーンが自然。器用さにびっくり。また一段、すてきな男役になるんじゃ? 内面から成長できると思います」
龍スカーレットへの期待感を胸に、自身は3度目のバトラー役に感謝する。
「初めてのときは役の大きさが分かっていなかった。でも2回、3回目と…。男役なら誰しもやりたいという役をやらせてもらって、幸運だと思います」
今回、けいこ場に劇団初代バトラーの榛名由梨も入っていた。
「榛名先生とお話しする中で、私も存じ上げないくらいOGの方も、あまりに有名な方の名前も出てきます。長い歴史の中で、戦争を経て、お客さまやスタッフ、さまざまな方のお力添えがあって、今があるとあらためて思います」
今年は5月に主演作「第二章」の東京公演が決まり、7月からは星組公演への特別出演が決まった。秋には運動会もあり、年末にはディナーショーも控える。
「忙しさに追われて終わるようなことだけはしたくない。ひとつひとつを丁寧に、楽しみながらやっていきたい」。公私ともに宝塚一色となる1年。「今年は宝塚に、どっぷりと漬かりたい」と言い切る。“劇団の顔”は丁寧に、着実に、101年に向かい、歩を進めていく。【村上久美子】
☆轟悠(とどろき・ゆう)8月11日、熊本県生まれ。85年「愛あれば命は永遠に」で初舞台。97年に雪組トップ就任、02年に専科へ異動し、03年から劇団理事。00年「凱旋門」で文化庁芸術祭優秀賞、02年「風と共に去りぬ」で菊田一夫演劇賞を受賞。「おかしな二人」(11、12年)「第二章」(13年)と、ニール・サイモン氏作の喜劇にも挑戦し、役の幅を広げる。昨年は「南太平洋」にも主演。趣味は海外旅行、油彩画、デッサン画。168センチ。愛称「トム」「イシサン」。
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