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碁 キ ゲ ン碁キゲンいかが?秋乃です

無意識に無になることの難しさ

関西女流トーナメント決勝戦。対局前、緊張感も高まってきます。右は榊原史子6段。左は私
関西女流トーナメント決勝戦。対局前、緊張感も高まってきます。右は榊原史子6段。左は私

 <万全に泣き、不良に笑う> 昨日(今日は原稿を書いています)は手合いでした。なんとか勝つことができましたが、実は風邪を引いてしまい、体調は最悪。前日は勉強どころか、一日体力の回復に努めていました。正直、調整不足も甚だしいです。

 でもなぜかそういう時に限って、うまく打てたりするものなんですよね。

 以前、対局前日に急に胃腸の様子がおかしくなり、普段なら一日寝てれば治るものが、朝になっても治らない。それどころか胃腸に加え頭も痛くなり、初めて不戦敗にしようかと思ったほどでした。

 這う思いで向かった私は、もはや対局どころの話ではない状態だったのです。それが…あれよあれよで、その日は勝利しちゃったんです。対局後、「様子が変だったね~。でも碁の内容はよかったんじゃない?」と、先輩棋士からまさかのお褒めの言葉をいただくこととなったのです。

 いや~私って強いでしょ!! って、そんなことが言いたいんじゃありません(^_^)。もちろん…ですw。

 当然、勝負なので勝ちたいと思ったり、よりうまい手はないかと必死になって打つわけですが、体調が悪い時にはそんなこと考える余裕がない。きっと、そういう時って「無心!」なんですよね。

 逆に、手合い前にいっぱい勉強して体調万全で臨んだときには、あれこれ考えすぎて、うまくいかないこともあります。

 あ~この局面、この間のタイトル戦ではこう打っていたな~。でも私はこっちに打ちたい。ん~ん、でもでも~、みたいな悩みに陥り、どんどん深みにはまっていくのはよくあることです。

 過信が油断につながり、後半ボロボロ~なんていうのも悪い例ですね。

 とにかく、囲碁において精神状態というのはものすごく勝負を左右させるものなんです。これはきっと他の競技やお仕事でも一緒なのでしょうね。

 私はこれまで、非公式ではありますが、1度だけ棋戦で優勝したことがあります。関西女流トーナメント。文字通り「関西の女流ナンバー1」を決める試合です。決勝戦は午後からの公開対局でした。

 それまでの私なら、まず前日は緊張からほとんど眠れず、朝から食事も喉を通らない…自分の碁が打てなくて何度悔しい思いをしたことか。

 でも、その日は違ったんです! 前日は7、8時間ぐっす~り寝て、なぜかお昼はテレビを見ながら、から揚げ弁当をペロリ。大勢のお客さまを前にしたときは、「こんなにたくさんの人が私の対局を見に来てくれたんだ」と、うれしく思ったのを覚えています。

 そして何より、対局するのが楽しみでしょうがなかったんです。先に挙げた「無心」でありつつ、前向きな気持ちがプラスされた、まさに最高の精神状態だったのだと思います。

 技のなさを、心と体でカバーした優勝だったのかなと、いま振り返ってみるとそう感じます。

 ん~ん、でも、1度そうなれたからと言って、いつもそうなれるわけではないのが頭が痛いところです。なぜその時はそんな状態でいられたのか…自分でもよくわかりません。

 これからの棋士道も私の悩みは続きそうです。

[2014年4月22日10時10分]

優勝カップを手にして、ちょっとホッとしたのかな…
優勝カップを手にして、ちょっとホッとしたのかな…








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