【ロサンゼルス22日(日本時間23日)=千歳香奈子通信員】第87回アカデミー賞授賞式が行われ、長編アニメーション賞にノミネートされたスタジオジブリの高畑勲監督(79)の「かぐや姫の物語」は受賞を逃した。受賞したのはディズニーの3DCGアニメ「ベイマックス」。昨年、ジブリの盟友、宮崎駿監督(74)の「風立ちぬ」が、「アナと雪の女王」に敗れたのと同じ状況になった。

 3DCGアニメが世界を席巻する中、線で絵を描くことを貫いた高畑監督の思いは実らなかった。「非常に残念なのは多くの作品が立体なこと。平面で絵で表現することが認められたら、これからも隆盛になる可能性もあった。世界全体を見れば、あの手法をやり抜いたことは評価されるべきじゃないか」。表情と言葉に悔しさがにじんだ。

 日常生活の中に突如、かぐや姫が現れるおとぎ話「竹取物語」を独自の解釈で映画化。「日本(の物語)は日常にファンタジーを持ち込むことが多い、それを3DCGでやると別世界になり、絵でなくなる」と考えた。現実と本物を描く手法としてスケッチのような描線で作品を作り、完成まで約8年かかった。

 一方で、ディズニーは製作責任者のジョン・ラセター氏をはじめ、スタジオジブリに影響を受けてきた。「かぐや姫の物語」の描線を見ても「絵をやりたい」と評価したという。ただ結果は「ベイマックス」と、併映の「愛犬とごちそう」の短編賞合わせて同社初の2冠。西村義明プロデューサーは「この10年、ジブリを研究し尽くしたんでしょうね」と分析した。

 高畑監督は次回作について聞かれ、「ありがとうございます」と意欲を示した。同時に「日本は一丸となって(作品作りを)もり立てるというより、借りを返す形で参加する。そういう意識が強いので心配があるのは当然」とも話した。