上方落語家で人間国宝の桂米朝さんの死去から一夜明けた20日、長男桂米団治(56)は大阪市西成区の寄席「動楽亭」に出演、噺(はなし)の中に米朝さんを登場させるなど熱のこもった高座をやり遂げ、観客を沸かせた。

 約50人のファンらが詰め掛けた寄席に、米団治は黒紋付き姿で現れ、噺のまくらで、米朝さんが亡くなった経緯を説明、「本当に大往生。さすが人間国宝」と笑わせた。その後「やっぱりこれかなと思って」と、古い噺を米朝さんが再構成した代表演目「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」の前半を演じた。

 死んだ者たちが地獄巡りをしていると、亡くなった歴代の名人たちが出演する地獄の寄席に「桂米朝、本日来演」の看板が。そこで死者の一人、米団治と会った米朝さんが「おまえはここに来るのは100年早いわ! 娑婆(しゃば)でもっと修行せい」と一喝して噺が終わると、観客から大きな笑いと拍手が起こった。

 開演2時間前から入り口前に並んでいた大阪府貝塚市の中野明子さん(56)は「(米朝さんが)亡くなられた翌日でも米団治は絶対高座に立つと思った。米朝さんもそれを喜んでいると思う。若いお弟子さん、孫弟子さんもたくさん育っているので、遺志を継いでほしい」と語った。

 米朝さんは19日、肺炎のため亡くなった。