22日に都内の自宅浴室で急死した俳優平幹二朗さん(享年82)の通夜が27日、東京・青山葬儀所で営まれた。元妻で女優佐久間良子(77)も参列、平さんについて「近くて遠い人でした」と語った。長男で俳優平岳大(たけひろ=42)が喪主を務め、葬儀・告別式は28日午前11時から同所で営まれる。

 参列者を見送った佐久間は、目に涙をいっぱいためていた。平さんについて聞かれると、天を見上げふうっと息をした。「近くて遠い人でした」。絞り出した言葉に、万感を込めた。

 平さんと佐久間は1970年に結婚、74年に岳大ら双子をもうけたが、84年に離婚した。2004年に岳大の初舞台「鹿鳴館」で共演して以降会うことはなかった。今年7月に岳大が一般女性と結婚、12月に予定している披露宴で久しぶりに再会するはずだった。しかし、再会がこの日の通夜になってしまった。

 佐久間は、平さんの様子を聞かれると「たくさんの人に見送っていただいて、安らかな気持ちで旅立たれたと思います。穏やかないいお顔でした」と語った。

 通夜の最中は親族席に座り、喪主を務めた岳大、長女の少し後ろで参列者にあいさつした。気丈だった子供たちのことに話が及ぶと「ありがとうございます。どうぞこれからもよろしくお願いします」と涙声になった。

 当初、佐久間は参列はせず、静かに見送るつもりだったが、急きょ通夜への参列を決めた。毅然(きぜん)としながらも涙を流す佐久間の様子に、関係者も声を掛けるのをためらう雰囲気だった。佐久間は「『ありがとう、お疲れさま』と申しました」と、最後に平さんに掛けた言葉を明かし、斎場を後にした。

 棺(ひつぎ)には、岳大からの手紙が納められた。亡くなってからこの日までに書かれたものだという。遺影には、3年ほど前に撮影された事務所のプロフィル写真が使われた。平さんは顔の前で手を軽く組み、ほほ笑んでいる。後輩俳優たちが言う「芝居を見守ってくれている」ような表情だ。遺族の意向で戒名はない。芸能関係者ら約500人が参列し、別れを惜しんだ。【小林千穂】