杉咲花(19)が5日、横浜市内で行われた第38回ヨコハマ映画祭授賞式で助演女優賞を受賞した。

 「湯を沸かすほどの熱い愛」での演技が評価されたもので、監督賞と脚本賞の2冠を獲得した中野量太監督(43)と並んで、作品としては3冠を受賞した。

 杉咲は昨年、ヨコハマ映画祭で最優秀新人賞を受賞した。その時の受賞対象作「トイレのピエタ」が公開された翌日の15年6月7日に、「湯を沸かすほどの熱い愛」の撮影に入ったという。スピーチでは、わずか1年で新人賞から助演女優賞へとステップアップした率直な驚きを語った。

 杉咲 去年、ヨコハマ映画祭で新人賞をいただきまして、そういうものをいただくこと自体、初めての経験で印象に残っています。新しい作品に入っていく中で、すごく励みになっていました。まさか今年、賞を取るとは思ってもいなかったので、本当に驚きました。普段、作品に携わらせていただく時は、撮影が終わってしまうと、自分が作品のために出来ることがほとんどなくなってしまうので、寂しくなることが多いのですが、公開後にこういう形で、また監督に恩返しすることが出来て、心から幸せに思います。

 撮影中は、母役の宮沢りえ(43)とは毎日、メールをしていたという。「監督が『おかん、と入れてメールを書いてほしい』とおっしゃって」と明かした。中野監督は、その狙いについて「クランクインした時に、俳優さんが1番、やりやすい形を作りたかった。それが監督の仕事だと思い、やってもらいました」と説明した。

 中野監督は脚本について、熱い思いを語った。

 中野監督 3年前に新人監督賞をいただきました。また賞をいただけて、うれしい。僕が勝負するには、面白い脚本を書くしか、やりようがなかった。映画の6、7割は脚本で決まると思っていて、本を必死に書きました。0からキャスティングに入って、この映画を作りました。まず宮沢りえさんがやると言ってくださって、その後、杉咲さん、オダギリジョーさん、松坂桃李さんと次々と決まっていきました。常識的に考えたら、新人監督の(原作のない)オリジナル脚本に、このキャストが集まって映画が成立するのは、なかなか難しいと思うんです。本を信じて、キャストの方が集まってきてくれました。僕は、それが本当にうれしくて…これが僕の財産というか、ちゃんといい脚本を書けば、新人だろうがオリジナルだろうが、ちゃんと待ってくれているんだなと知りました。これから、ずっとオリジナルというわけにはいかないかも知れないですけど、本にはこだわって、こだわって、いい本をキャストに届けて、キャストとスタッフと作り上げて映画を届けられる監督でいたいと思う。

 中野監督が切々と熱い思いを訴えた後、客席の一部から拍手が起きた。【村上幸将】