神戸市兵庫区の新開地商店街に、上方落語の定席「(仮称)神戸新開地演芸場」が開かれることになり、上方落語協会の桂文枝会長(73)は13日、記者会見に臨み、3年越し悲願の実現を笑顔で報告した。

 「私が名誉館長になって、先頭に立ってお客さんを集めていきたい」。結婚式のような真っ白なネクタイを着けた文枝は、満面笑みで誓いを立てた。

 かつて「東の浅草、西の新開地」と呼ばれ、30近い劇場でにぎわっていた同所だが、衰退の一途。現在、劇場はほぼ、無くなっており、3年前、新開地2丁目商店街振興組合所属のすし店から、上方落語協会へ街の活性化に尽力を願う手紙が届けられ、企画がスタートした。

 文枝は会長就任後の06年、大阪に戦後初の定席「天満天神繁昌亭」を開館しており、手紙を「運命の出会い」と言い、兵庫県や神戸市の協力を仰ぐよう、話を進めてきた。

 ところが、1年半ほど前、県や市の支援体制の足並みがそろわないこともあり、いったんは開設断念へと傾いた。文枝は「これはもう厳しい、難しいと思って、あきらめて手を引こうと思った」と吐露。ただし、その後、県や市の支援体制も整い、総事業費2億円で、「新開地まちづくりNPO」が建設、所有、運営管理することで話がまとまった経緯があった。

 「新開地-」の高四代理事長は「あの(断念を伝えにきた)ときの文枝会長は真っ青な顔、真っ白な唇で。相当の決意で来られたんでしょうな」と振り返り、話し合いの末、文枝は「(高理事長の名前が)四代と、6代文枝であわせて10代。“重大”案件として話を進めましょう」。両者で話し合い、考え直したことで、この日、夢実現への第1歩を踏み出せた。

 「(上方落語)協会員も(大阪の)繁昌亭ができてから70人ほど増えて、出演できる劇場がほしかった。今の人にも“掛け持ち”を経験してほしいし、街に人が集まるきっかけになればうれしい」

 天満天神繁昌亭ともども神戸の新劇場も、新開地も、“繁昌”させたいという。計画では、約500平方メートルの敷地に2階建ての演芸場を建設。天満天神繁昌亭とほぼ同規模の約200席の予定で、地主と20年の賃借契約を結んだ。

 工事は今年6月にも着工し、来年7月ごろのオープンを目指す。開業後はほぼ毎日営業する見通し。昼間は協会落語家出演による寄席、夜は演劇、音楽団体などへ広く貸し出すという。

 またこの日、同劇場の施設名称を募集することも発表。神戸新劇場開設に力を注いだ桂きん枝副会長(66)は「『繁昌亭』という名前は使わないし、応募にあっても選びません」とし、新たな名称を募った。応募は5月31日まで。問い合わせは「新開地まちづくりNPO」電話078・576・1218まで。