仲代達矢(85)が主宰する無名塾で主演した作品を上映する「映像で観る無名塾劇世界2018」が、11月10日から25日まで東京・世田谷区の仲代劇堂で開催される。

1975年創立の無名塾では38作品を上演したが、仲代の妻で演出家の隆巴さんによって舞台を映像化していた。細かいビデオカット割台本を使い、本番前の数日をかけて、カメラ4台で撮影した。仲代は「演劇は花のように消えてしまう。隆さんは、仲代の方が先に逝くだろうと思い、無名塾で仲代がこういう芝居を作っていたということを残すため映像化していた」。

今回は、各演劇賞を受賞した85年「どん底」91年「令嬢ジュリー」93年「リチャード三世」をはじめ、精神科病院を舞台に無名塾の秘めたる異色作と言われる86年「プァー・マーダラー」、怪盗ルパンを生んだ作家モーリス・ルブランの物語で、隆さん書き下ろしの87年「ルパン」、イプセン作の95年「ソルネス」、アーサー・ミラー作の02年「セールスマンの死」など、えりすぐりの7作品を上映。毎回80席限定で、トークショーを行う回もある。

仲代は「映像を見たけれど、僕も若かったし、元気だった。どれも画像がしっかりしている。『仲代は不器用な俳優』とよく言われていたけれど、それほど不器用じゃなかったし、うまいじゃないかと思った。70年近く俳優をやっているが、あらためて役者の基本は演劇だと思った」。

来年11月からは無名塾公演「タルチェフ」に主演する。モリエール作品で、俳優座時代の師匠千田是也さんも演じた。隆さんが「仲代でやりたい」と言っていた作品でもある。「90歳までは芝居をしたい。やりたい作品がたくさんあるから」。俳優としての意欲に衰えはない。