人間国宝桂米朝(88)の長男で落語家、桂米団治(55)が27日、33年ぶりに改訂された「米朝落語全集」(創元社、全8巻)の完成報告会見に出席し、同日の午前1時1分に亡くなった母、中川絹子(なかがわ・きぬこ)に“感謝”した。

 この日は午後から、80年に発刊され、上方落語家の間では「はなし家の教科書」ともされていた「-全集」改訂版の完成報告が予定されていた。前日深夜に米朝の妻で、米団治の母絹子さんが亡くなったが、米団治は予定通り、会見に出席した。

 米団治は、兵庫県内の自宅で発見された未発表音源、原稿から、全集全8巻の改訂版を完成させる作業を1年以上、続けてきたが、途中、自身が体調を崩し「今年3月ごろにはウルトラマンでいうカラータイマーが鳴ったような状況で、苦しかった」と振り返った。

 それでも「何よりもの勉強になる」と作業を続け、あらためて「米朝の偉大さを実感しました」。そんな息子を見守るかのように、絹子さんは静かに闘病を続け、完成を報告する前夜に他界した。

 米団治は「まとめあげた日に母が亡くなるなんて、信じられないです。僕の襲名興行でも松竹座(大阪市)千秋楽の日に米朝が脳梗塞で倒れまして、こういうときに、ふと緊張の糸が途切れることが起きるんです」。前日夜、母が亡くなってから「一睡もしてない」と言いながらも、会見中にはときおり、笑顔も。全集改訂版の完成と、息子の奮闘を見届けてから、旅立った母に感謝していた。