6日の引退記者会見で宮崎駿監督(72)は、スタジオジブリの後進の作品に関与することは「ありません」と語る一方、「若いスタッフから『これやりたい』という声が届くのを願っています。意欲や希望や能力にかかっている」と後進を刺激した。世界のジブリは今後どうなるのか。

 もともとジブリは宮崎監督と高畑勲監督(77)が作りたいものを作るためにできた会社。2人が高齢となった今、盟友、鈴木敏夫プロデューサーは会見で判断しかねている表情で言った。「僕も65歳で一体どこまで関わるかという問題もある。今ジブリにいる人たちによって決まると思う」。

 アニメ評論家の氷川竜介さんは「ジブリには題材は潤沢にあるはず」と話す。「例えば『火垂るの墓』『コクリコ坂から』『風立ちぬ』のような、日本の失われた風景だけでなく、そこに生きた人々の気持ちや価値観を、ある種のリアリティーを持って描く作品。ジブリ以外にはできない」。

 後継者について氷川さんは「宮崎監督は『耳をすませば』(95年)の近藤喜文監督に次世代を預けるつもりだったと思いますが、98年に亡くなってしまった」と指摘。宮崎監督の長男吾朗監督の「コクリコ坂」を高く評価するとともに、「宮崎監督があちこちで言っているのが(『エヴァンゲリオン』シリーズの)庵野秀明監督が『風の谷のナウシカ2』を作りたいと言っているという話です」。

 アニメ草創期から活躍するアニメーター鈴木伸一さんも「米林宏昌監督の『借りぐらしのアリエッティ』のヒットは、ブランドの力もあると思いますが、宮崎さんに鍛えられたはずです」と次世代の活躍に期待する。

 それでもやはり期待してしまうのは、宮崎監督の再登板。氷川さんは「長編は引退しても『やりたいことはたくさんある』と言っているので、お孫さんのために短編で『となりのトトロ2』を作ったりしないかな。全くない話ではないと思う」と希望は捨てていない。